「たかが猫に何をそんなムキになってるのかね。生徒会は」


私たちに向けられた視線もバカにしたもの。

今まで静観していた藍君もさすがに頭にきたのか、冷静だけれど反抗するように言う。


「そんなこともわからないで教師やってんスか」


この藍君の発言に、学年主任のこめかみに青筋が浮き出た。

いよいよ険悪な雰囲気になってしまった私たちの間に、再び、水樹先輩の声が発せられる。


「親とはぐれ、それでも懸命に生きようとしている命です。たかがなんて話じゃない」


それは、思いやりに溢れた声で。


「それとも先生にとって死は軽いもので、明日自分が死ぬとわかっても、素直に受け入れるということですか?」


助けたいという気持ちがこめられていて。


「ぐっ……それは……」

「生きたいと思うのなら、お願いします。俺は、助けられる命があるなら助けたい」


水樹先輩が頭を下げると、私も続いて頭を下げた。