☆スターツ出版文庫アンチブルー創刊第2弾!
『完璧な彼女が死にました』
此見えこ /著
イラストレーター:yudouhu
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2025年4月28日発売
☆スターツ出版文庫アンチブルー創刊第2弾!
『完璧な彼女が死にました』
此見えこ /著
イラストレーター:yudouhu
全体を通して胸が苦しく締め付けられるお話でした。羽島の気持ちもわかるし、小春の気持ちも分かる。身近で起こった「同級生の死」という非現実的な現実に、周りが噂をするのも分かる。とにかく出てくる登場人物がすべてに感情移入ができ、最初から最後まで、ずっと胸が締め付けられているような感覚がしました。
周りからみたら「完璧な彼女」ですが、「彼女自身」の思いは違う。
敏感な思春期のみに関わらず、大人になっても続くその葛藤は、ある種、人生のテーマでもあるのかもしれません。
綺麗ではないけれど、それでも見て取れる「青春」に、美しさを感じずにはいられませんでした。
死にたい。理由は違えど、私も学生時代に思ったことがあるからこそ、痛いくらい心に響きました。
とても素敵な作品です。読了後は、再び美しい表紙を見てください。
そのときに湧き上がる感情は——是非、ご自身で。
(海月いおり さん)
花井紗子は、完璧に見える人だった。
でも、その完璧さの裏には、誰にも言えない思いがあったのだと思う。
親友の小春は紗子の顔が、幼馴染の羽島は紗子の髪が好きだった。
その感情は、少しズレて見えるかもしれない。けれど、そういう形だからこそ、彼らは支えられていた気がする。紗子が死を選んだ理由は、簡単なものではない。「綺麗なままでいたい」という願いに、私はどこか共感してしまった。
誰にも見せたくない部分を抱えて、静かに苦しんでいる人は多いのではないかと思う。“普通じゃない自分” に戸惑うことは、きっと誰にでもある。
この物語は、そんな思いをそっと受けとめてくれるようだった。
(あおい さん)
友人になる経緯もきっかけも異なるけれどそれでも互いを思う気持ちがあって、真相に迫ると同時に解明されていくのが読んでいて楽しかったです。
思春期は特に「普通」に悩んだり憧れたりすることも多いと思うので、「普通じゃない」ことに気付きながらも真っ直ぐ生きる3人に憧れを覚えました。(高校時代に出会いたかったな……笑)
また、出会いや選択、周囲の声で簡単に人生に良くも好ましくない状況にもなってしまうことを多々痛感しました。
さらには、度々話題になっているある話題も登場していたり経験したことのある日常が描かれていたりと共感する場面も多く、勝手にですが自分だけだと思っていたことを共有できたのも嬉しかったです。
常に生き方を考えさせられる作品でした。
綺麗な青春だけではなく闇を抱えながらも模索する姿に救われる人はたくさんいると思いますし、少なくとも高校時代の私を救ってくれた素敵な作品でした!
(珀玖 さん)
学校の高嶺の花、花井紗子が自宅の浴槽で死んだ。彼女の死をめぐり、自殺か他殺かが幼馴染の侑と親友の小春の両視点からミステリーのような展開で事件の真相に迫っていくストーリー。
その中で見えてきた三人の「普通じゃない」姿。「普通じゃない」からこそ分かり合えた関係について考えさせられる内容だった。
私がこの作品を読んで感じたのは、思春期というこの年齢特有の危うさだ。小さな言葉ひとつで「普通ならしない」線の向こう側を簡単に飛び越えてしまう(しまえる)年齢だということ。同世代の子をもつ親としては(明日は我が身…ではないけれど)もっとデリケートに扱わないといけない難しさがあるな、と感じた。
本編に触れると、三人とも【自分の人生なんだから、自分の好きなことだけやって、好きに生きたらいいんだ】という信念の元に考え行動していた。それがお互いにとっての救いとなっていた事は間違いない。けれど、それを良い方に持っていくか悪い方に持っていくかは周りの環境と本人の考え方次第でどっちにも簡単に転ぶ可能性があるという、危うい年代なんだと思う。
「よかった」と思う自分と「もっと一緒にいたかった」と思う自分とのジレンマ。最後の侑と小春の姿がとても切ない。そして、私も彼らにはずっと一緒にいて欲しかったというのが本音だ。まさにキラキラした青春とはひと味違う、けれど令和に生きる若い世代の子ども達が笑っている裏で抱えているかもしれない闇(病み)にも触れた"アンチブルー"な作品だった。
(さく さん)