左遷された転生おっさん三等騎士、【現代フード召喚】でうまうま辺境スローライフ勤務を冷酷剣姫やポンコツ美少女精霊使いたちと謳歌する~食文化の遅れた異世界で現代フード出しまくり~

 「う~~ん(クチクチ)」

 朝食が終わったあとの食堂。
 多くの団員は各課へ散っていき、広いホールにはぽつぽつと人影が残るだけだ。食器の片付けも一段落し、今は一番静かな時間帯である。

 俺がグルト辺境三等騎士団食堂課に配属されて、気づけば一週間。
 その間に緊急出動だの非常呼集だの、そういったイベントは一切発生していない。

 ……つまり。

 特になにも起きていない。

 よしよし。
 最高じゃないか。

 辺境とはいえ騎士団。もう少しバタつくかと思ったが、ここは驚くほど平和だ。
 うるさい上司もいない。定時で帰れる。休日は完全オフ。
 俺の理想にかなり近い。

 さて、食堂課のほうだが朝めしにインスタントスープを導入した結果、評判は上々である。
 「朝が楽しみになった」「パンが進む」など、うれしい声がちらほら。
 さらに手を加える余地はあるが、焦らずゆっくりでいいだろう。

 それよりも……昼食だな。

 朝と同じく、いや正直それ以上にう~~んな内容である。
 はっきり言ってマズイ。
 朝めしも大事だが、昼もある程度うまくないとなぁ。そもそものやる気が出ないだろう。
 俺は考え込むように顎を動かしながら、手元の袋から一本取り出した。

 「さて、どうするかな……(クチクチクチ)」
 「ああぁ~先輩、それなんですか?」

 俺が昼食メニューをうんうん考えていたら、メガネをクイっと上げてミーシャが俺の手元をガン見してきた。

 「おう、ミーシャもどうだ(クチクチ)」

 俺は袋から一本取り出して、ミーシャに手渡した。
 自分用にも新しいのを出して先端をかじる。
 最初は硬いが、噛んでいるうちにじわっと旨味が広がって自然と口元がゆるむ。

 「ふぁ……な、なんか噛めば噛むほど味が出る!? これ美味しいぃ~♪」

 そう俺とミーシャがクチクチ噛んでいるもの、それはさきいか(スルメ)だ。
 裂きイカのスルメ、普通にうまい。

 「お昼のメニュー考えてるんですか?(クチクチ)」
 「ああ、そうだな(クチクチ)」

 噛む、噛む、また噛む。
 顎を動かしていると、不思議と頭の中まで整理されてくるから不思議だ。
 有名な某漫画家さんも創作中はさきいかをかじっていたらしいし。

 「「……(クチクチクチ)」」

 ……まあ、俺の目の前のメモ用紙は白紙なんだが。
 さきいかだけが順調に減っていく。

 「タケオさん♪」
 「おっすタケ~~」
 「タケオっち!」

 聞き覚えのある声に振り返ると、ルリアとスリーナにゴンスの3人がいた。
 どうやら休憩時間らしい。

 ルリアとミーシャは手を合わせてキャッキャウフフしている。
 俺の部屋に来た時とは大違いだな。まあ似たような歳だし、仲良くなるのは時間の問題だったというわけだ。

 「むっ……お二人も先輩のお知り合いなんですか?」

 ミーシャがスリーナとゴンスにけん制するかのような目を向ける。
 ああ、たしかに2人に会うのは初だったか。またルリアとの初見のようなことになるのかと思っていたら。
 ちょっと様子が違った。

 「わあぁ~仲間ですね~♪」

 ミーシャがスリーナの胸元を見て、ぱっと表情を明るくする。

 「なんこいつ、ムカつくんだけど……」

 即座に空気がピリッとした。
 いや、何が仲間なのかは深く考えないでおこう。
 ミーシャはなんでも口に出しちゃう癖がある。これに関しては、いい時もあれば悪い時もある。

 ふむ、さきいか食っとけばスリーナの機嫌も良くなるだろう。
 俺は現代フード召喚で、さきいかの袋をポンポンと出す。
 3人とも「なんだこれ?」みたいな顔でおそるおそるスルメを噛んだ。

 「わぁ~~おいしぃ~~♪」
 「なんこれ、手が止まんないんだけど!?」
 「噛み応えがあるな……あごの筋肉が鍛えられるぜ!」

 よしよし、反応は上々だ。スリーナの機嫌も良くなった。
 さきいかの力は偉大だな。

 なんか他のも食いたくなってきたぞ。
 よっしゃ、現代フード連続召喚―――!

 「いかくんもあるぞ~~」
 「ほ~~らこっちはタコくんだぞ~~」

 「「「「こっちもいい~~!!(クチクチクチ……)」」」」

 そしてお次は、「おっちゃんいか」だ。むかし駄菓子屋で買った定番のやつ。

 「んん? タケ~なんかこれ、ちっちゃいけど……」
 「たしかに、子供のお菓子?なんですか」

 ふふ……駄菓子だと侮る事なかれ。そいつのポテンシャルはすげぇぞ。

 「んん……酸っぱい! でも……なんか食べちゃうぅう~~♡」

 ぐふふ、この酸っぱさはジャンク性を秘めているのだ。
 いくたの少年少女がこいつに堕とされたんだよ。かくいう俺もだが。

 「先輩~~この袋の先端にある黒い部分はなんですか?」
 「ああ、うらがえしてみ」

 「はずれ? って書いてますけど……」
 「そうだクジがついてんだ」

 そう、ワクワクドキドキのあたりつきだ。
 1個しか買えなかったとしても、もしかしたら……

 「タケオさん! これ!」

 ルリアが裏返したビニールには「あたり」の文字が。

 その瞬間―――

 フッとおっちゃんいかが一袋、ルリアの前に落ちた。

 「え? これ?」
 「あたりをひくともう一袋だ」

 そう、俺の現代フード召喚をなめてもらっちゃ困る。
 あたりが出れば自動召喚でもう一袋、ちゃんと出てくるのだ。

 「せ、先輩!」

 ミーシャがグッと手を伸ばしてきた。
 しゃーない。

 まあたまには大人買いしてもいいよな。
 こうして俺は、ゆる~~い午前を満喫したのだった。