左遷された転生おっさん三等騎士、【現代フード召喚】でうまうま辺境スローライフ勤務を冷酷剣姫やポンコツ美少女精霊使いたちと謳歌する~食文化の遅れた異世界で現代フード出しまくり~

 まてまてまて。
 俺が課長ってどういうことだ? どんな人事ロジックが発動したらそうなるんだ?

 「あ、そうだ。これ先輩に渡してくれってフルノラ団長が」

 ミーシャから渡された紙をひらくと。
 ……うん、なんかハートが多い。嫌な予感しかしない。

 『団長のタケオちゃんへ♡
 課長にしたげたから~~タケオちゃんの好きにしてん♡
 会議の時はお土産わすれちゃやーよ♡♡』

 ……マジかよ。

 「ち、ちなみに前任者は……?」

 「ああ、あいつなら昨日の夜中に最前線送りみたいですよ♪ もうせいせいしました~♪」

 マジか……
 夜中って、馬車も動いてないだろ。どうやって出発したんだ?

 ただミーシャいわく、前任課長はセクハラ三昧の最低野郎だったらしい。
 なるほど、じゃあ団長の判断は正しいのだろう。
 正しいんだろうが……

 え、俺がその穴埋め?
 これどうなんだ? さすがに想定外すぎるぞ。

 う~~む……

 とはいえ考えようによっちゃ、うるさい上司がいない職場と言う事になる。
 団長は過酷なノルマを課しているわけでもないし、ゆるくやっても良さそうだ。たまに差し入れすればいいのだろう。
 むしろ、甘いもん渡しとけばゴキゲンでいてくれる可能性が高い。

 ……いや、これは意外と当たりなのでは?

 うむうむ、ネガティブ要素ばっか考えてもしゃーないしな。

 よし、気を取り直して業務確認だ。

 まず三等騎士団食堂課のメンバー。
 俺にミーシャ、じいさま、それともう一人……は休職中らしい。
 つまり実質3人か。

 「おもな仕事は団員への朝食と昼食の提供だな」
 「はい、そうですね~土日は休業ですよ~」

 おお……完全週休二日制……!
 当たり前に聞こえるかもしれんが、おれにとっちゃ天国のような響きだ。

 「あとは食材調達と帳簿管理や備品管理あたりですかね」

 なるほど、まあだいたい想像通りだな。
 焦らずゆるく、様子を見ながら回していこう。ガミガミする上司もいないことだし。

 そうして昼食の提供が終わり、帳簿チェックをしていたら―――もう夕方。

 「先輩~~厨房の方は終わりましたよ~」
 「うむ、ではあがろうか」

 「はいっ♪」

 じいさんの長いヒゲもピクリと嬉しそうに揺れた。

 うぉおお……こんな明るい時間に仕事が終わるなんて……。
 前世や本部じゃ考えられん。涙出そう。

 やはり定時であがる。これはスローライフ勤務の基本だな。



 ◇◇◇



 三等騎士食堂は朝食と昼食だけの稼働。晩飯は「各自なんとかしろ」というスタイルだ。
 まあ団員も、夜はグルトの町へ飲みにいったりと好き勝手しているようだし。これはこれでゆるくてありがたい。

 さてさて自室に戻った俺はというと……

 ズズズぅ~~

 のどを滑っていく感触がたまらない。ひんやりとして、それでいて香りがふわっと広がる。
 薬味の刻みネギとわさび。それにきりっと冷えたつゆの香りが鼻を抜ける。

 そう、ざるそばを召喚してすすっていた。
 異世界に来てなお、こいつのうまさは鉄板である。

 いや、最高やな。マジで。
 朝昼と洋食続きだったし、日本食が恋しかったんよ。

 俺がズルズルとざるそばを楽しんでいると、背後に気配を感じた……

 「あぁ~~やっぱり一人で楽しんでるぅ!」

 振り向けばなぜかルリア。
 ……おい。ここ男性寮だぞ?

 「だって……今日は朝からタケオさんに会えてないんだもん」

 言い訳がかわいいのはずるいが、だからってなぜ俺の部屋に来る。
 追い返すべきか迷っていると、鍵の閉まる音がする。

 「ていうか俺、鍵かけてなかったか」

 「大丈夫です、いまかけました!」

 いやいやいや、おまえちょっとは警戒しろよ。なに鍵かけました宣言しちゃってるの。
 俺はおっさんとはいえ一応男なんだぞ、超絶美少女でたゆんたゆん揺らしちゃダメだろ。
 ……まああり得ないが手を出した瞬間、俺の人生が即終了するのは確実だが。

 そんなことを考えていると……ルリアのお腹がかわいく鳴った。

 「ルリアも食うか?」

 「わぁあ~~やた~食べます~!」

 素直なやつである。
 俺はざるそばをもう一人分召喚した。

 が……箸と麺つゆを持って少し困った様子のルリア。

 「えと……」

 ああ、食べ方がわからんのか。
 よしよし。

 「これはな。こうやって食べるんだ」

 俺はそばをすくい、つゆにくぐらせてズズ~ッと音を立てて喉へ流し込む。
 俺を真似てそばをすするルリア。

 ツルツル~~

 「―――っ!?」

 ルリアの肩がびくっと揺れた。
 かわいらしいすすり方だな。

 「ふぁ……不思議な味ですけど……おいしいぃい!!」

 そりゃそうだ。ざるそばにハズレはない。
 すぐにルリアもツルツルが加速しはじめた。

 ズズズ~~~
 ツルツル~~~

 静かな部屋に響くのは、2人のそばをすする音のみ。

 ……平和だなぁ。いいよ、この感じ。


 ――――――ガチャガチャ!


 え?
 そんな平和を壊すかのように、なんか嫌な音が聞こえた。

 扉……開けようとしてね?

 いやもうこれ以上は誰にも構いたくないぞ。無視してもいいかな……と思っていたら―――

 ガチャリ。

 扉が普通に開いた。

 なんであくの!?
 ルリアがさっき鍵をかけたはずだぞ。

 「先輩ぃ~~♪ って……ああぁ! またあたらしい女連れ込んでるぅ~~!」

 入ってきたのはミーシャだった。

 「いやどうやって扉あけたんだよ……?」
 「先輩の部屋の鍵を持ってるなんて、かわいい後輩として常識ですよ?」

 常識じゃねぇよ。なに勝手にスペアキー所持してんだこのメガネっ子後輩。

 そんな俺の疑問にはお構いなしに、ミーシャは俺の横にいるルリアを見るや……即、顔が険しくなった。

 「……剣姫のつぎはロリっ子ですか? しかもなんですかその乳! 剣姫やムチムチ団長と同じでむだにでかいじゃないですか!」

 ルリアの胸部を凝視するミーシャ。
 うん、まあ……事実ルリアは見た目ロリ美少女だが胸は……凄いことになってる。

 対してミーシャは。
 ……うん、ひかえめだな。

 いきなり登場したミーシャの言葉に、ルリアの眉がひくっと上がる。

 「ろ、ロリ巨乳って……わたしはタケオさんの同期なんですぅう~! だから仲良しなんですぅ! 入室も許可されてるんですぅ!」
 「ふん、そんな数日程度の関係性で……ぽっとでの女に先輩はわたせませんね!」

 ずり落ちそうなメガネをクイッと上げるミーシャ。
 その動きに合わせて胸部は一切揺れない。悲しいほどに。

 にしても良く分からんバトルが始まってしまったじゃないか。
 俺、普通に仕事あがりなんだが。

 「牛女は敵です!」
 「うううぅ……牛じゃないもん!」

 ふぅ~~まったく。

 「まあまあまあ。落ち着けふたりとも。ほら、ミーシャもそばを食え」

 「……そ、そんなものに釣られるわけ……いただきますッ!」

 一秒ともたなかったな。
 速攻で釣り上げられたミーシャが、勢いよくざるそばをすする。

 ツルツル~~。

 「うわぁ……な、なにこれ、おいしすぎるぅ!!」
 「でしょ~~♪ このたれが不思議な味なんですよ~」
 「うんうん、この細かい緑もツ~ンとくるけど、いい感じだわ~」

 ルリアとミーシャが、ざるそばへの感想をキャッキャしながら言い合う。
 この異世界にはあまりない系統の味なんだが、それは単に経験したことが無いだけだったようだな。知ってしまえば美味しいの判定が出るってわけだ。

 ツルツル~~。

 よし、戦闘終了だな。

 さっきまでにらみ合っていた2人が、無心でそばをすする。

 ズズズぅ~~
 ツルツル~~
 ツルツル~~

 部屋に流れる麺の音。

 うんうん、こういうのでいいんだよ。

 思わぬハプニングはあったが、最終的にはざるそばに戻ったな。

 大満足で食べ終わったあと。
 最後は蕎麦湯を出して、ズズ~っと麺つゆを楽しんだ。いや~~最高だわ。