「……灰だ。真っ白な灰だよ」
騎馬戦を終え食堂のテーブルに突っ伏した俺は、魂が口から半分はみ出した状態でそう呟いた。
いやいや、もうちょい踏ん張れると思ったんだが……
食堂のテーブルについたとたんに、ガクンときた。
視界がチカチカする。お弁当の大量召喚というもはや個人の域を超えた魔力労働の直後に、あの激しい騎馬戦だ。魔力タンクは空っぽ、精神ゲージは赤点滅、体力に至ってはマイナスに突入している。
なんか一気に疲れの波が押し寄せてきた感じだ。
「先輩~~顔色がおっさんの燃えカスみたいになってますよ」
「……なんだその不名誉な表現は。せめて精魂尽き果てた騎士とか言ってくれ」
いや、それも似たようなもんか。
いかん、頭も回らなくなってきたぞ。
「でも、そんなにボロボロで大丈夫なんですか~? この後、夕食会の準備が控えてるんですよ?」
ミーシャの言葉が今の俺には死刑宣告のように響く。
分かってる、分かってるんだ。だが、指一本動かすのも億劫なんだ。
「とりあえず演習場の宴会設営状況を見てきますね。先輩、少しでも休んでてくださ~い。ってまあ、休めるか分かりませんけど」
ミーシャが意味深な予言を残して食堂を出ていった数分後。
その予言は、最悪……いや、最高に騒がしい形で的中した。
「タケオさ~~ん! ご準備はいかがですの~~♪」
食堂の扉が壊れんばかりの勢いで開かれ、弾丸のように飛び込んできたのはステア王女、その後ろにはフルノラ団長が続く。
「あ、ステア王女様……」
もはや弾丸王女に突っ込む元気もない俺の返答を聞き、ムムムと顔を寄せてくる王女。いや、近い……
「さてはタケオさん、お疲れですわね!」
鎧姿からドレス姿になった可憐な王女が、さらに顔を近づけてフムフムと頷く。
「い、いえ王女殿下、少しばかり魔力・体力・精神力が落ちてるだけです」
「つまり……疲れすぎてお食事のご準備ができないと?」
「い、いえいえ。夕食会までにはなんとか……」
とは言ったものの、マジでどうするか。
備蓄してある牛丼レトルトパックで対応とかは、正直ショボイ感が否めないし。
「ええぇえ! タケオさまのお食事が食べられない!? そんなのあり得ませんわ!! わたくし、今日のために朝食も昼食も控え目にしてましたのよ! 万死に値しますわ、その疲労!!」
どんだけ楽しみにしてんだ、この王女様。まあ嬉しくはあるがな。
あと、王女さま昼の弁当おかわりしてたけどね。
「と、とにかく準備に入りますので王女殿下は本庁舎でゆっくりお休み頂ければ……」
「こうなったら力技ですわね」
「はい?」
「タケオさん、いまから回復魔法をかけますわ」
おお、さすが王女さま。回復魔法も使えるのか。
たしかに、おっさんはもうクタクタだ。魔力よりも、まずは体力を回復させるのは理にかなっているかもしれん。
「はい! 動かず静かに……」
なぜか俺の首をがっしり掴む王女さま。
え? これ回復魔法をかける体勢?
「いきますわよ~~~超上級回復魔法! 超上級回復魔法!! 超上級回復魔法ッ!!!」
「ぎゃあああああああ!?」
連発ぅ? しかも、すげぇ上級魔法じゃねぇか!
凄まじい光の奔流が俺を包む。回復魔法というのは本来、温かく心地よいもののはず……だが過剰すぎるエネルギー注入はもはや暴力だ。細胞一つ一つが無理やり叩き起こされ、「起きろ! 動け!」と脳内で誰かが回復を強要してくるような感覚だ。
「ちょ待っ……ステア王女様! 身体が熱い! 逆に燃え尽きちゃいそうだから!!」
おっさん、こんな上等な魔法を受け慣れてないんだ。
「まだ足りませんわ! おかわりですわよ!!」
俺の言葉にはお構いなく、さらに連発される上位回復魔法。視界が白一色に染まり俺の意識が天に召されかけたその時、別の感触が俺を現世に引き戻した。
「んもぅ~~ステア王女は強引ですねぇ。タケオちゃ~~ん、ワタシの♡マッサージで、詰まった疲れを流してあげるん♡」
むちむち……
「へ? フルノラ団長……って、ん、んおっ!?」
横から伸びてきた騎士団長のしなやかで力強い指先が、俺の首筋や肩甲骨のキワをえぐり取るような絶妙な力加減で刺激する。しかも、なぜか耳元で吐息を漏らしながら。
「……ふふ、ここが凝ってるのかしらぁ~~タケオちゃんの疲れの出入り口、優しく激しくほぐしてあげるからぁねぇ♡」
エロい! なんかエロい! ていうかすべてがエロい!
おっさんなんか、ムチムチ団長に馬乗りされているのだが!?
「キャ! なにやってんですか!?」
そこへ、騒ぎを聞きつけたルリアが飛び込んできた。
「は、ハレンチです! 団長さん、タケオさんに何を! は、 離れてください!」
「あらルリアちゃ~ん、これは神聖な医療行為なのよぉ♡」
そんな団長の言葉に、プク~~っと頬を膨らませつつも、真っ赤な顔を横にそむけるルリア。
ていうか、これ医療行為なのか?
「はぁ~~い、こんなもんかしらねぇ~♡」
「んん?」
フルノラ団長の馬乗りから解放された俺だったが……なんか体が軽くない?
なんか本当に体力が回復している感があるぞ。
「ふふ~~わたくしの回復魔法がバッチリきまったようですわね」
「あら~~ワタシのマッサージも良かったでしょ~♡」
ふむ、超上級回復魔法を連発で浴びて、おっさんの身体がビックリ順応できないところに団長のマッサージで慣らされたのだろうか。
なんにせよ体力的には(無理やりだが)回復した。まあ精神力は逆に削られたような気が凄くするが。
これでなんとか夕食会の準備を……と思った矢先。
「タケオ、どうやら身体は動くようになったみたいだな!」
聞き覚えのある凛とした声が響く。剣姫シュトリアーナが腕に抱えきれないほどの小瓶を抱えて登場した。
「って……まさかそれ」
「あとは魔力だな! 他の騎士団からカツア……じゃなくて友好的にゆずってもらってきたぞ!」
いま不穏な言葉が聞こえたような……いや、そんなことよりもその瓶って。
「さあ、これを飲め! 特製のマジックポーションだ!」
「やっぱり……いや、それはもういい! お昼に飲みすぎたから……」
クソ不味いのを我慢して飲み続けたんだ。
さすがに、また飲むのはキツイ。
「つべこべ言うな! ほら、口を開けろ! 一気に行くぞ!」
「ぶふぉっ!? ぐ、ぐぶぶっ! 鼻に入ってるから!!」
シュトリアーナは俺の顎を掴むと次々とマジックポーションの栓を抜き、わんこそばの如き勢いで俺の口に流し込み始めた。
「まだまだあるぞ! ほら、二本同時だ! 混ぜれば栄養満点だ!」
「お、おぇえええ! マズい! マズすぎる!」
ダメだ……とても飲めんはこれ。
涙目で拒絶する俺。そこへピピンとアホ毛が視界に入ってきた。
「タケオさん、精霊たちにお願いして少しアレンジしてみました!」
ルリアが精霊の横にサラとディーネがいる。
「サラちゃんが熱々に加熱して、ディーネちゃんがキンキンに冷やしたんです。交互に飲めば、喉越しが変わってまだ入るかもしれません!」
「いや、温度の問題じゃないんだよルリア……根本的なマズさが拒絶反応を起こしてるんだ!」
しかもサラの過熱したやつ、グツグツに煮込まれてるじゃねぇか。
ふあ……このにおいだけで死ぬ……
「タケオ、ここは根性だぞ。ほら、三本同時だ!」
横から剣姫シュトリアーナが3本も突っ込もうとしてくる。
「待て! 全員待て! ストップだ!!」
俺の必死の叫びに、シュトリアーナたちが動きを止める。みんなの善意(たぶん)はありがたい。だが、それが本人にとって本当に良いモノかはわからんのだぞ。
阿鼻叫喚の食堂。俺は必死に頭を回転させた。このままでは魔力が回復する前に、俺の味覚と精神が崩壊する。何か、この地獄のマジックポーションを中和しかつ効率よく摂取する方法はないのか……。
マジックポーションの主成分は、強烈な酸味と独特の粘り気……。
なら、あれをぶつければいいんじゃないか!?
「―――現代フード召喚!」
「な、なんですの、その箱は?」
王女が不審そうに見つめるのは、紙パックだ。俺はパックを開けるとジョッキになみなみと注ぎ始めた。
「王女殿下、これは飲むヨーグルトです」
「ええ? ヨーグルトを飲むんですの?」
この異世界にもヨーグルトは存在する。だが飲むものではないし、ましてや俺の召喚した飲むヨーグルトのような甘みはまったくない。
俺はシュトリアーナから上等マジックポーションを受け取ると、白いエキスの入ったジョッキに流し込んだ。つまり飲むヨーグルトに酸味をぶち込んだわけだ。
「どれ……グビっ……」
おお!
「グビっゴクゴクゴク!」
これはいけるぞ。
まさしくラッシーだ。
飲むまでは不安もあったが、これはいける。
ちょっと酸味が強いが、まあそれはそれでアリだな。飲むヨーグルトがそもそも濃厚な口当たりで、うまく調和してくれている。
ゴクゴクゴク……
なんだろう、ちょっとクセになってきた……
止まらん!
そこからは、まさに「魔力回復合戦」だった。俺がジョッキを空にするたびに、ルリアが新しいジョッキを持ってきて、シュトリアーナがポーションを注ぎ、俺が飲むヨーグルトで割り、王女がさエクストラヒールをかけ続けて、団長が筋肉をほぐす。
「よしタケオ、どんどんいくぞ!」
「タケオさん、綺麗なジョッキ持ってきました~」
「さあ~~どんどん重ね掛けしますわよ~♪」
「タケオちゃん、もみもみよぉ~♡」
そして1時間後……
俺の体内で、かつてないほどの魔力が渦を巻いていた。
「うぉおおおおお!! 元気いっぱい、腹いっぱい!! 身体が軽い、視界がクリアだ! いくらでも召喚できそうな気がするぜ!!」
魔力の過剰摂取でラリっているのか分からんが、とにかくやる気に満ちあふれている。
俺が食堂の真ん中でガッツポーズを決めていると、ちょうどミーシャが戻ってきた。
「ただいま戻りました……って、ええ!? な、なんですか先輩、その顔のテカリ! それに腹いっぱいって……まさか剣姫様に続いて、王女様まで食べちゃったんですか!?」
「どっちも食ってねぇよ! 語弊がありすぎるだろ!」
「ああ……もう不敬罪で減給ですね。いや、降格かな……。というかそのまま処刑されるコースじゃないですか?」
「だから違うって言ってるだろ。魔力と体力を全力で回復してもらったんだよ!」
俺は鼻息荒くミーシャに詰め寄る。
あまりの気迫にミーシャがのけぞった。
「でも、先輩。そろそろ夕食会の用意を始めないと、大丈夫なんですか?」
「ふふふ……ミーシャ。今の俺を誰だと思っている。今の俺はいまだかつてないほどギンギンだぜ!!」
「……ギンギンって。先輩、やっぱり王女様たちに何か……」
「違う! 魔力・体力・精神力、すべてがMAXを超えてオーバーフローしてるって意味だ!」
魔力タンクは満タン。やる気は空回りするほど溢れている。
よしよし、俺の現代フード召喚最大の祭りを見せてやる!
騎馬戦を終え食堂のテーブルに突っ伏した俺は、魂が口から半分はみ出した状態でそう呟いた。
いやいや、もうちょい踏ん張れると思ったんだが……
食堂のテーブルについたとたんに、ガクンときた。
視界がチカチカする。お弁当の大量召喚というもはや個人の域を超えた魔力労働の直後に、あの激しい騎馬戦だ。魔力タンクは空っぽ、精神ゲージは赤点滅、体力に至ってはマイナスに突入している。
なんか一気に疲れの波が押し寄せてきた感じだ。
「先輩~~顔色がおっさんの燃えカスみたいになってますよ」
「……なんだその不名誉な表現は。せめて精魂尽き果てた騎士とか言ってくれ」
いや、それも似たようなもんか。
いかん、頭も回らなくなってきたぞ。
「でも、そんなにボロボロで大丈夫なんですか~? この後、夕食会の準備が控えてるんですよ?」
ミーシャの言葉が今の俺には死刑宣告のように響く。
分かってる、分かってるんだ。だが、指一本動かすのも億劫なんだ。
「とりあえず演習場の宴会設営状況を見てきますね。先輩、少しでも休んでてくださ~い。ってまあ、休めるか分かりませんけど」
ミーシャが意味深な予言を残して食堂を出ていった数分後。
その予言は、最悪……いや、最高に騒がしい形で的中した。
「タケオさ~~ん! ご準備はいかがですの~~♪」
食堂の扉が壊れんばかりの勢いで開かれ、弾丸のように飛び込んできたのはステア王女、その後ろにはフルノラ団長が続く。
「あ、ステア王女様……」
もはや弾丸王女に突っ込む元気もない俺の返答を聞き、ムムムと顔を寄せてくる王女。いや、近い……
「さてはタケオさん、お疲れですわね!」
鎧姿からドレス姿になった可憐な王女が、さらに顔を近づけてフムフムと頷く。
「い、いえ王女殿下、少しばかり魔力・体力・精神力が落ちてるだけです」
「つまり……疲れすぎてお食事のご準備ができないと?」
「い、いえいえ。夕食会までにはなんとか……」
とは言ったものの、マジでどうするか。
備蓄してある牛丼レトルトパックで対応とかは、正直ショボイ感が否めないし。
「ええぇえ! タケオさまのお食事が食べられない!? そんなのあり得ませんわ!! わたくし、今日のために朝食も昼食も控え目にしてましたのよ! 万死に値しますわ、その疲労!!」
どんだけ楽しみにしてんだ、この王女様。まあ嬉しくはあるがな。
あと、王女さま昼の弁当おかわりしてたけどね。
「と、とにかく準備に入りますので王女殿下は本庁舎でゆっくりお休み頂ければ……」
「こうなったら力技ですわね」
「はい?」
「タケオさん、いまから回復魔法をかけますわ」
おお、さすが王女さま。回復魔法も使えるのか。
たしかに、おっさんはもうクタクタだ。魔力よりも、まずは体力を回復させるのは理にかなっているかもしれん。
「はい! 動かず静かに……」
なぜか俺の首をがっしり掴む王女さま。
え? これ回復魔法をかける体勢?
「いきますわよ~~~超上級回復魔法! 超上級回復魔法!! 超上級回復魔法ッ!!!」
「ぎゃあああああああ!?」
連発ぅ? しかも、すげぇ上級魔法じゃねぇか!
凄まじい光の奔流が俺を包む。回復魔法というのは本来、温かく心地よいもののはず……だが過剰すぎるエネルギー注入はもはや暴力だ。細胞一つ一つが無理やり叩き起こされ、「起きろ! 動け!」と脳内で誰かが回復を強要してくるような感覚だ。
「ちょ待っ……ステア王女様! 身体が熱い! 逆に燃え尽きちゃいそうだから!!」
おっさん、こんな上等な魔法を受け慣れてないんだ。
「まだ足りませんわ! おかわりですわよ!!」
俺の言葉にはお構いなく、さらに連発される上位回復魔法。視界が白一色に染まり俺の意識が天に召されかけたその時、別の感触が俺を現世に引き戻した。
「んもぅ~~ステア王女は強引ですねぇ。タケオちゃ~~ん、ワタシの♡マッサージで、詰まった疲れを流してあげるん♡」
むちむち……
「へ? フルノラ団長……って、ん、んおっ!?」
横から伸びてきた騎士団長のしなやかで力強い指先が、俺の首筋や肩甲骨のキワをえぐり取るような絶妙な力加減で刺激する。しかも、なぜか耳元で吐息を漏らしながら。
「……ふふ、ここが凝ってるのかしらぁ~~タケオちゃんの疲れの出入り口、優しく激しくほぐしてあげるからぁねぇ♡」
エロい! なんかエロい! ていうかすべてがエロい!
おっさんなんか、ムチムチ団長に馬乗りされているのだが!?
「キャ! なにやってんですか!?」
そこへ、騒ぎを聞きつけたルリアが飛び込んできた。
「は、ハレンチです! 団長さん、タケオさんに何を! は、 離れてください!」
「あらルリアちゃ~ん、これは神聖な医療行為なのよぉ♡」
そんな団長の言葉に、プク~~っと頬を膨らませつつも、真っ赤な顔を横にそむけるルリア。
ていうか、これ医療行為なのか?
「はぁ~~い、こんなもんかしらねぇ~♡」
「んん?」
フルノラ団長の馬乗りから解放された俺だったが……なんか体が軽くない?
なんか本当に体力が回復している感があるぞ。
「ふふ~~わたくしの回復魔法がバッチリきまったようですわね」
「あら~~ワタシのマッサージも良かったでしょ~♡」
ふむ、超上級回復魔法を連発で浴びて、おっさんの身体がビックリ順応できないところに団長のマッサージで慣らされたのだろうか。
なんにせよ体力的には(無理やりだが)回復した。まあ精神力は逆に削られたような気が凄くするが。
これでなんとか夕食会の準備を……と思った矢先。
「タケオ、どうやら身体は動くようになったみたいだな!」
聞き覚えのある凛とした声が響く。剣姫シュトリアーナが腕に抱えきれないほどの小瓶を抱えて登場した。
「って……まさかそれ」
「あとは魔力だな! 他の騎士団からカツア……じゃなくて友好的にゆずってもらってきたぞ!」
いま不穏な言葉が聞こえたような……いや、そんなことよりもその瓶って。
「さあ、これを飲め! 特製のマジックポーションだ!」
「やっぱり……いや、それはもういい! お昼に飲みすぎたから……」
クソ不味いのを我慢して飲み続けたんだ。
さすがに、また飲むのはキツイ。
「つべこべ言うな! ほら、口を開けろ! 一気に行くぞ!」
「ぶふぉっ!? ぐ、ぐぶぶっ! 鼻に入ってるから!!」
シュトリアーナは俺の顎を掴むと次々とマジックポーションの栓を抜き、わんこそばの如き勢いで俺の口に流し込み始めた。
「まだまだあるぞ! ほら、二本同時だ! 混ぜれば栄養満点だ!」
「お、おぇえええ! マズい! マズすぎる!」
ダメだ……とても飲めんはこれ。
涙目で拒絶する俺。そこへピピンとアホ毛が視界に入ってきた。
「タケオさん、精霊たちにお願いして少しアレンジしてみました!」
ルリアが精霊の横にサラとディーネがいる。
「サラちゃんが熱々に加熱して、ディーネちゃんがキンキンに冷やしたんです。交互に飲めば、喉越しが変わってまだ入るかもしれません!」
「いや、温度の問題じゃないんだよルリア……根本的なマズさが拒絶反応を起こしてるんだ!」
しかもサラの過熱したやつ、グツグツに煮込まれてるじゃねぇか。
ふあ……このにおいだけで死ぬ……
「タケオ、ここは根性だぞ。ほら、三本同時だ!」
横から剣姫シュトリアーナが3本も突っ込もうとしてくる。
「待て! 全員待て! ストップだ!!」
俺の必死の叫びに、シュトリアーナたちが動きを止める。みんなの善意(たぶん)はありがたい。だが、それが本人にとって本当に良いモノかはわからんのだぞ。
阿鼻叫喚の食堂。俺は必死に頭を回転させた。このままでは魔力が回復する前に、俺の味覚と精神が崩壊する。何か、この地獄のマジックポーションを中和しかつ効率よく摂取する方法はないのか……。
マジックポーションの主成分は、強烈な酸味と独特の粘り気……。
なら、あれをぶつければいいんじゃないか!?
「―――現代フード召喚!」
「な、なんですの、その箱は?」
王女が不審そうに見つめるのは、紙パックだ。俺はパックを開けるとジョッキになみなみと注ぎ始めた。
「王女殿下、これは飲むヨーグルトです」
「ええ? ヨーグルトを飲むんですの?」
この異世界にもヨーグルトは存在する。だが飲むものではないし、ましてや俺の召喚した飲むヨーグルトのような甘みはまったくない。
俺はシュトリアーナから上等マジックポーションを受け取ると、白いエキスの入ったジョッキに流し込んだ。つまり飲むヨーグルトに酸味をぶち込んだわけだ。
「どれ……グビっ……」
おお!
「グビっゴクゴクゴク!」
これはいけるぞ。
まさしくラッシーだ。
飲むまでは不安もあったが、これはいける。
ちょっと酸味が強いが、まあそれはそれでアリだな。飲むヨーグルトがそもそも濃厚な口当たりで、うまく調和してくれている。
ゴクゴクゴク……
なんだろう、ちょっとクセになってきた……
止まらん!
そこからは、まさに「魔力回復合戦」だった。俺がジョッキを空にするたびに、ルリアが新しいジョッキを持ってきて、シュトリアーナがポーションを注ぎ、俺が飲むヨーグルトで割り、王女がさエクストラヒールをかけ続けて、団長が筋肉をほぐす。
「よしタケオ、どんどんいくぞ!」
「タケオさん、綺麗なジョッキ持ってきました~」
「さあ~~どんどん重ね掛けしますわよ~♪」
「タケオちゃん、もみもみよぉ~♡」
そして1時間後……
俺の体内で、かつてないほどの魔力が渦を巻いていた。
「うぉおおおおお!! 元気いっぱい、腹いっぱい!! 身体が軽い、視界がクリアだ! いくらでも召喚できそうな気がするぜ!!」
魔力の過剰摂取でラリっているのか分からんが、とにかくやる気に満ちあふれている。
俺が食堂の真ん中でガッツポーズを決めていると、ちょうどミーシャが戻ってきた。
「ただいま戻りました……って、ええ!? な、なんですか先輩、その顔のテカリ! それに腹いっぱいって……まさか剣姫様に続いて、王女様まで食べちゃったんですか!?」
「どっちも食ってねぇよ! 語弊がありすぎるだろ!」
「ああ……もう不敬罪で減給ですね。いや、降格かな……。というかそのまま処刑されるコースじゃないですか?」
「だから違うって言ってるだろ。魔力と体力を全力で回復してもらったんだよ!」
俺は鼻息荒くミーシャに詰め寄る。
あまりの気迫にミーシャがのけぞった。
「でも、先輩。そろそろ夕食会の用意を始めないと、大丈夫なんですか?」
「ふふふ……ミーシャ。今の俺を誰だと思っている。今の俺はいまだかつてないほどギンギンだぜ!!」
「……ギンギンって。先輩、やっぱり王女様たちに何か……」
「違う! 魔力・体力・精神力、すべてがMAXを超えてオーバーフローしてるって意味だ!」
魔力タンクは満タン。やる気は空回りするほど溢れている。
よしよし、俺の現代フード召喚最大の祭りを見せてやる!

