交換日記から始まる、僕らの恋と七不思議。

 人気がない静かな図書室で一人、本棚の背表紙を眺めていたら、面白い本を見付けた。
 ハードカバーの美しい本にタイトルはない。
 ページを捲ると真っ白だった。

「文字が書いてない。本じゃなくて、ノート? 日記とか?」

 真っ白なページを眺めていたら、黒いシミが浮き上がった。

「え……」
 
 黒いシミは、ジワリと広がると、文字になった。

『君のことを教えて』

 文字は、文章になって浮かび上がった。
 とてもワクワクしたから、自分のことを書いた。

『初めまして。僕は、芽吹(めぶき)詩歌(うた)
 明倫(めいりん)学園高校2年3組、読書部です。
 放課後、図書室で本を読むのが、読書部の活動内容です。
 時間になったら、寮に帰ります。
 明倫は全寮制なので、自分の部屋で本を読んでもいいんだけど。
 僕は図書室の雰囲気が好きだから、図書室で本を読みます。
 お気に入りの席は一階の一番奥の端っこ。
 人が少ないので、集中して本が読めるんだよ。
 どんな本も好きだけど、世界の神話が大好きです。
 あとは、本棚を眺めるのも好き。
 本棚にずらりと並ぶ背表紙を見ているだけでも、ワクワクします。
 毎日、本棚を眺めてお気に入りの本を探して、読書を始めます』

 ペンで額をトントンしながら、詩歌は考えた。

「あとは、そうだなぁ。今日のことかな」

 詩歌はペンを持ち直すと、本にスラスラと文字を書いた。

『今日は、いつもの本棚に、初めての本を見付けました。
 ハードカバーで、表紙の花の絵がとても綺麗でした。
 僕は綺麗なものが大好きです。
 見ていて気持ちがワクワクするし、嬉しい気持ちになるから。
 綺麗な装丁の本を見つけると、心がキラキラするんだ。
 この本は古い本みたいだし、アンティークなのかな。
 デザインも古風だし、紙の端が少し日焼けしてる。
 古くて美しいものも、大好きです。
 でも、この本にはビックリもあったよ。
 本を開いたら、真っ白なページに文字が浮かび上がってきたから。
 自然と文字が浮かび上がるなんて、驚いちゃった。
 だけど、ビックリよりワクワクが勝ったから、僕のことを書きました。
 次は君のことを教えてください』

 書き終えて、ペンを置く。

「お返事、来るかな」

 詩歌は、返事が来るのを待った。
 そう待たないうちに、黒いシミがじわりと滲んだ。
 万年筆のインクが滲むように、文字が浮かび上がった。

『僕を知りたいなら、この本を持って帰って』

 詩歌はまた、返事を記した。

『わかったよ。寮の部屋に、一緒に帰ろう。
 部屋に戻ったら、君のことを教えてね』

 詩歌はワクワクした気持ちと一緒に、交換日記を胸に抱いた。
 もっと話してみたい。
 そんな気持ちを抱きながら、寮の部屋に帰った。