覇王令嬢の野望 ~絶対平和主義の少女に転生した最強女帝の帝国再建譚~


「ヘ、ヘルミーネ!?」
「なんでここに!?」

 右奥にいる父とその横にいる20代くらいの男が驚く。
 まあ、もう1人は兄であり、私の暗殺を知っているんだろうな。

「帝位継承権14位、ヘルミーネ・クローネンシュタールが陛下に拝謁いたします」

 私は女なので頭も下げないし、修道服なのでカーテシーもしない。

「うむ」

 皇帝が頷く。

「ヘルミーネ……何をしておるか!? 下がれ!」

 父が立ち上がって叫んだ。
 近くでいきなり叫んだので皇帝がちょっと眉をひそめる。

「何故? 私は今日、陛下より招かれてここに参上しました」
「陛下! この者は招待状を持っておりませぬ! 即刻、追い出すべきです! それよりも兵は何故、通したのだ!」

 小物だな……こいつはダメだ。

「ヘルミーネ、招待状は?」

 皇帝が聞いてくる。

「持っておりませぬ」
「では、退室せよ」

 皇帝は父がうるさくて面倒なのだろうな。
 だが、それはあまりにも言ってはならぬことだ。

「陛下、私は招待状をもらっておりません。聞けば、今宵は帝位継承権を持つ者を集めて晩餐会を開いておられるのでしょう? では、何故、この私を招いてくださらないのですか? 私は陛下の姪にして、帝位継承権14位です。私を招かなかった正当な理由をお聞かせ願いたい。それとも私はクローネンシュタールではないと?」

 そう言うと、皇帝は心底めんどくさそうな顔になる。
 正当性はこちらにあるのだ。
 それは皇帝でも一蹴できない。
 何故なら先代の時の争いがあるから。

「招待状は全員に送ってある」
「主に誓って私の元に届いておりませぬ」
「ハァ……レナード、招待状はどうした? 子に渡すように言ったぞ」

 皇帝が父を見る。

「い、いや、渡したはずですが……あ、いや、ヘルミーネのお付きの者に渡しました。その者が捨てたのかもしれません」

 ディアナとユルゲンが悪いらしい。
 責任転嫁とはさすが小物。

「父上、陛下は子に渡すように命じました。それを何故、そのような下賤の者に渡すのです? 陛下からの招待状は陛下のお言葉。陛下を軽んじられておられるのか?」

 バーカ、バーカ。

「き、貴様……!」
「ハァァ……やめよ!」

 陛下が一喝すると、父がこちらを睨みながらも座った。

「ヘルミーネ、どうやらこちらの手違いでそなたに招待状が届かなかったようだ。それは詫びよう。しかし、何故、遅れた? すでに晩餐会が始まって2時間余りも過ぎておるし、すでに食事は終わったぞ?」

 何、この質問?
 招待状がないから時間がわからなかったって言わせたいのかな?
 それでいちゃもんを付けて、追い出したいのかな?

「私は主に祈っておりました」
「ほう? それが遅れた理由か?」
「はい」

 仕方がないね。

「くだらぬ。そんなものは別の時間にすればよい。陛下、やはり追い出しましょう。この者こそ、陛下を軽んじております」

 うるさい小物だな……

「ヘルミーネ、お前の父がこう言っておるが?」
「陛下を軽んじているというならばその通りです。私は主を優先します。主のお言葉を聞くことが何よりも優先されます」

 主と皇帝では主が上。

「は? ついには狂ったか?」

 狂ってんのはお前の知能指数だ。

「ヘルミーネ、主の言葉を聞いたと?」

 陛下が怪訝な顔で聞いてくる。

「はい。主より国を救うように命じられました」
「ッ! 無礼者! 陛下、この者は主を騙り、反逆を起こそうとする不忠者です! 即刻、斬るべきです」」

 小物がまーた立ち上がって怒鳴った。
 陛下の鬱陶しそうな顔が見えないのか?

「主を騙る? 父上は私が嘘をついていると?」
「嘘に決まっておるわ!」
「何故、そのようなことを言われる? 何故、私を嘘つきと決めつけられる?」

 まあ、嘘なんだけど。

「あり得ないからだ!」
「主の声を嘘と……貴様こそ、神敵だ! 衛兵! 衛兵! この主を侮辱する異教徒を斬れ!」

 そう命じると、部屋の壁に引っ付いている兵士達が動揺しだした。

「何を言うか! 貴様こそ、異教徒だ!」
「衛兵、何をしている!? それとも貴様らも異教徒か!? ならば剣を寄こせ! この者と一緒に斬って主に詫びさせてやる!」
「狂人が! やはり厄災の子――」
「黙れっ!」

 陛下がテーブルを叩き、場を鎮めた。

「レナード、ヘルミーネ、この場をなんと心得る!?」
「しかし、陛下……」
「レナード、黙れ! ヘルミーネ、遅れた理由はよくわかった。さっさと座れ。話が進まぬわ」

 お前が意地悪してきたせいだぞ。

 私は父と周囲にいる兵士達を睨み、左手前の空いている席についた。

「それでは話を再開する」

 再開?

「陛下、私はレナード公爵殿のせいで聞いておりません。最初からお願いします」

 もう父とは呼ばなくていい。
 神敵だから。
 まあ、これは明確に敵対しているというアピールだ。

「ヘルミーネっ!」

 父が睨んできたが、陛下が手で制した。

「よい」
「しかし、陛下!」
「まだ話を始めたところだ。さっきの騒ぎのせいで頭から抜け落ちている者も多い。最初から仕切り直す」
「ッ! わかりました」

 父がすんごい睨んでくる。
 もっとも、こっちも憎しみを込めた目で睨んでいるけど。
 もう皇帝も皇族も兵士も……この場にいる全員が察しているだろう。
 父が私に何をし、何故、敵対しているのかを。