城の門に向かって歩いていくと、門を守る槍を持った2人の兵士が見えてきた。
兵士はこちらに気付くと、槍を向けることはしないが、怪訝な表情で見てくる。
「止まれ。修道女か? もう20時を回っているぞ。こんな時間に何をしている?」
「修道院に帰りなさい。おい、送っていけよ」
「ああ。そうだな」
まあ、私のことなんか知らんか。
「私は皇帝陛下の姪であるヘルミーネ・クローネンシュタールである。口の利き方には気を付けろ」
「え……」
「ヘルミーネ様?」
2人が顔を見合わせた。
「知らぬか? レナード公爵が三女、ヘルミーネである。今宵は陛下より招かれて参った。通せ」
「へ、ヘルミーネ様……お供は?」
「待機させておる。いいから通せ」
「い、いや、そう言われましても……」
ほう?
「お前、私の道を阻むか? 死罪に値する」
そう言って、剣を抜く。
「ちょ、ちょ、ノーレちゃーん」
お前は黙ってろ。
「そ、そう言われましても……」
使えぬ。
「私を阻むな」
そう言って剣を収めると、足に魔力を込めて飛び上がり、兵を超えて着地した。
そして、そのまま歩いていく。
「お、おい、どうする!?」
「どうするって言われても……」
判断力のない者を門番にするな。
私が門番ならヘルミーネの名を騙った賊として斬る。
そのまま歩いていくと、門の前にやってくる。
「開門! ヘルミーネ・クローネンシュタールである!」
そう言うと、少しの間があったが、門が開いた。
実に警備の甘い城である。
開いたので門を抜け、中庭を歩く。
周りに多くの兵士がいるが、皆が見ているだけで何もしてこない。
まあ、見た目が10歳の少女だし、本物かどうかの区別はつかないからどうしていいのかわからないのだろう。
「いいのかな?」
「いいんだよ」
そのまま歩いていくと、城に入る扉の前に1人の男が立った。
男は白銀の鎧を着たおっさんであり、どう見ても一般兵ではなかった。
「ヘルミーネ嬢ですかな?」
「そう言っておる」
聞こえただろ。
「ヘルミーネ様、確かに皇帝陛下が皇族の方々を呼び、晩餐会をしておられます。しかしながら、招待状の方は?」
「ない。私の元に届いておらぬ」
「ならば通せません」
ほう?
「では、陛下に伝えよ。何故、この私を招かぬ? 私は帝位継承権14位であるヘルミーネ・クローネンシュタールだぞ。私を排除する正当な理由を説明せよ」
「そのまま伝えても?」
「そう言っておる。お前も耳がいらない人間か?」
剣の柄を握った。
「どうぞ……」
男が扉を開ける。
「それで良い」
男が促してきたので一緒に中に入った。
そして、男が歩いていったのでついていく。
城の中は構造自体は昔と変わらないが、やはりどこか古かった。
「こちらへ」
男が階段を上がるように促したので上がっていく。
「他の者は全員出席か?」
「はい。すべての皇族が集まっておられます」
やはりヘルミーネだけか。
『ミーネ、兄弟構成は?』
「兄が2人、姉が2人」
『見たことあるのか?』
「一応、あるけど、覚えてない。かなり昔なんだ」
ふむふむ。
それは好都合。
私も知らないし。
『皇帝とその子供にもか?』
「うん。顔が明確にわかるのは父だけ」
皇帝と父は年齢でわかる。
問題ないな。
ミーネに確認しながら階段を上っていくと、3階に着く。
「ヘルミーネ様、この奥で晩餐会をしておられます。ただ、すでに食事を終え、会議を始められたところです」
こいつ、晩餐会の状況を知っているということはかなり上の人間だな。
「ほれ」
腰から鞘ごと剣を抜くと、男に渡す。
さすがにこの歳でも剣を持って皇帝の前には行けない。
「行かれるのですか? 私から声をかけますが」
「お前が声をかけたら追い出される。私は昨日、毒を盛られて死んでおるのだ」
絶対に父がそう言う。
「え?」
「お前、名は?」
「わ、私ですか? 近衛隊隊長のレンナルトです」
ふむふむ。
立ち振る舞いからかなりの猛者と思っていたが、近衛隊の隊長か。
「良い名だ。しかし、ついていく者をしっかり見極めねばならぬぞ」
「えっと……」
「はっはっは。私以外に天に立つ者はおらぬということだ。そこで待ってろ」
そう言って、奥に歩いていくと、多くの近衛隊が通路の両脇に剣を持って備えていた。
とはいえ、特に私を止める様子もないのでそのまま歩いていくと、突き当たりに扉が見えてくる。
『ミーネ、行くぞ?』
「うん。行こう」
ほう?
『緊張は?』
「大丈夫」
『お前、本当に大物だな』
「いや、私、見てるだけだし……」
そう考えるのが大物なんだ。
この身体はミーネのものだというのに……
ちょっと呆れながらも扉の前にやってきた。
しかし、両サイドのいる兵士が動かない。
「何をしておる? レナード公爵が三女、帝位継承権14位であるヘルミーネ・クローネンシュタールだぞ?」
両サイドにいる近衛隊の兵士に告げる。
「帝位継承権14位、ヘルミーネ・クローネンシュタール様が参られました!」
右の兵士が高らかにそう告げると、左の兵士が扉を開けたので中に入る。
すると、かつての作戦会議場だった部屋には豪華な長机が置かれており、そこには左右に7人ずつが座っていた。
そして、正面席には長い白髭を生やした豪華な服を着たジジイが座っている。
さらには部屋の両脇にはずらっと近衛隊が囲むように並んでいた。
『正面のジジイが皇帝、右に奥にいるのが父だな?』
右奥の男は明らかに高齢なのだ。
他は40代くらいのおっさんもいるが、若い者が半分くらいいるし、中には私よりも下っぽい子もいる。
「うん」
さて、ここが最大の山場だ。

