お詫びチートではじめる異世界農園暮らし~【製作】&【開墾】スキルで好きに開拓したら、精霊姫やモンスターが住まう最強の土地ができました~

 夏が終わり、すっかり涼しい季節になった。

 青々と茂っていた森の木々の葉は少しずつ色を深め、強い日差しの代わりに心地よい涼風が流れこんでくる。

 そんな中、僕はログハウスから2ブロックほど離れた「住居区画」で、新たに農園に移住してきたモンスターたちの住居を建てていた。

 この住居区画はログハウスの西にある水場区画とは逆方向に位置している。

 水場の近くには職人区画があるし、排熱や騒音による苦情を避けるため、少し離れた場所を選ぶことにしたのだ。


「ごむごむ~(お屋形様、戻ったよ~)」


 新住居の壁作りをしていたら、額に「6」と書かれたゴレム6号が、チョコチョコと可愛らしい足取りでやってきた。 


「お疲れさま、ゴレム6号。素材はあったかい?」
「ごむ!(もちろん! 森でゲットしたよ!)」


 ゴレムは肩から下げていた【収納カバン】を差し出してきた。

 その中を確認すると、お願いしていた【硬い木】が、カバンの収納限界の20個入っていた。


「ありがとう。助かったよ。これで足りそうだ」
「ごむ~(よかった。また何かあったら声を掛けてね)」


 ゴレムはペコリとお辞儀をすると、畑区画の方へと走っていった。

 彼は元々畑区画担当なんだけど、住居用の素材集めを手伝ってもらったのだ。

 受け取ったゴレムの【収納カバン】から、僕の【神樹カバン】の中に素材を移して壁材を作っていく。

 まずは【木の壁】に【木の柱】。【木の床】や【木の屋根】も作って、【神樹カバン】の中に入れていく。


「よし。これくらいあれば足りるな」


 すでに組んである【木の壁】の隙間を埋めていき、【DIYセット】の釘を使って仮止めする。

 そして、開墾スキルの【凝固】で固定すれば壁の完成だ。

 明るい日差しを取り入れるために【大きめの窓】も忘れずに。

 屋根はすでに完成している。

 製作で作った【木の屋根】をパズルのように横に並べていくという、実に楽ちん仕様だった。

 この【木の屋根】の見た目は薄く裂いた木の板を重ね張りした「ウッドシェイク」と呼ばれるタイプだった。

 中世ヨーロッパなどの住宅でもよく使われていたもので、上の板が下の板を三分の二ほど覆うように重ね張りされている。

 ログハウスの屋根は石で出来てすごくおしゃれだけど、こっちも木の温かみがあって僕は好きだ。

 しかし、はじめは手探りだった住居作りも、すっかり手慣れてしまったな。


「ごむ~」


 そんな屋根の上から、ヒョイとゴレム10号が顔を覗かせた。


「ごむごむ(屋根の塗装が終わったよ~)」
「お、ありがとう」


 屋根の仕上げはゴレム10号にお願いしていたんだよね。

 ていうか、ゴレム10号ってば頭からペンキまみれだけど、どうやったらそんな風になるんだろう?

 ちなみに、彼が使っているペンキは【DIYセット】に入っていた。

 釘もここに入っているし、一番使っている道具が【DIYセット】な気がするな。


「よし。屋根も完成したし、最後の仕上げといこうか」


 入り口に【いい感じのドア】をはめこみ、室内に【不思議なランタン】を設置。そして、外に【木の立て看板】を建てて「13号棟」と書いた。


「……うん、これで完成だ」


 出来上がった住居を眺める。

 木目調の小屋が、農園の風景に見事にマッチしている。

 それがずらりと13棟。

 自分の手で作ったと思うと、どこか愛おしく思ってしまうな。


「しかし、なんだかんだで、もう13棟目か」


 思わずしみじみしてしまった。


「ここに住み始めて半年になるけれど、大きな農園になったもんだなぁ」
「ごむぅ~(そうだねぇ~)」


 隣のゴレムも感慨深そうにウンウンと頷く。

 ふと横を見ると、石造りに改装したメインストリートを、農作業中のゴレムやモンスターさんたちがのんびりと歩いていた。

 畑で収穫をやっているモンスターさんたちも沢山見える。

 アルレーネ様が移住してきたのを皮切りに、農園は賑やかさを増している。

 しっかり数えたことはないけれど、どのくらい住民がいるんだろう?

 まず、巨大な狼が6匹にゴレムが20体。

 サラマンダーさんが5人で、オークさんが15人。

 ウッドベアさん8匹に、スプリガンさん10人、マンティコアさんが8匹、ケンタウルスさんが9人。

 タヌキちゃん5匹、アヒルちゃん4羽、ニワトリ6羽。

 最後に、アルレーネ様と精霊さんたちが沢山。

 ……ううむ、改めて数えてみると本当に大所帯になったもんだな。


「もはやモンスターが住まう村だな」


 いつの間にやってきたのか、隣でハクが「くわぁ……」と大あくびをした。

 彼の背には笑顔のアルレーネ様が乗っている。


「ご提案なのですがカズマ様。ここを『村』として機能させてみてはいかがでしょう?」
「え? 村ですか?」
「行政機関──は、必要ないかもしれませんが、村としての体裁が整えば外界から物やお金が入って来るでしょうし」


 確かにそれがあると助かるかもしれない。

 なにせ、この農園には足りないものが多いのだ。

 例えば、畑や釣り堀では賄えない食材。

 調味料に、お酒。製作で物を作るために必要な素材。

 それに、牛や山羊などの家畜だ。

 いまのところ思いつくのはそれくらいだけど、必要とする場面に直面していないだけで、もっとあるかもしれない。

 それらを手に入れるには、商人に頼るしかない。

 定期的にここに顔を出してもらって、必要なものを依頼するのだ。

 そのためにはお金が必要だし、商人さんに安心して足を運んでもらうための体裁が必要になる。


「ちなみにここを村にしたい場合って、どうすればいいんですかね?」


 アルレーネ様に尋ねてみた。

 何だか詳しそうな雰囲気だったし。

 だけど、アルレーネ様はきょとんとした顔をした。


「え? どうすれば、とは?」
「例えば、国に届け出が必要とか……」
「え、ええっと……う~ん」


 そして難しい顔で首をひねる。


「に、人間界のルールは存じ上げませんが、村の名前を考えて周囲に通達を出せば良いのではないでしょうか?」
「名前か! それは良い考えだな!」


 ハクがわふっと鳴く。


「格好良い名前がいいと思うぞ!」
「か、可愛い名前も捨てがたいです!」
「……」


 僕は思わず胡散臭い顔をしてしまった。

 いや、確かに名前は必要だけど、それを考える前に他にやることがあると思うよ。絶対。

 というか、ここの土地って誰の所有物なんだろう?

 女神様の計らいで転生してきたわけだし、他人の所有地に勝手に住んでる……ってわけじゃないだろうけど。

 村として再出発するなら、そういう部分もクリアにしておきたいよね。

 でも、誰に聞けば良いんだ? 

 この世界の人間界の常識を熟知している人は農園にはいないし。

 ううむ、これは困ったぞ。

 商人さんに足を運んでもらう前に、お金を払って「相談役」を雇うべきかな?