星が輝く夜、青年は女性に向けて手を伸ばした。

 「俺にはお前が必要だ。お前に俺が必要なように。だから、俺を選べ」

 真剣な、人間には持ちえない輝く金色の瞳は女性を捕えて離さない。

 その(ふく)(しゅう)(しん)の宿った強い(まな)()しに女性は息を()む。まるで自分を映した鏡を見るように男性から目を外せない。

 あやかしを憎む彼から、自分はどのように見えているのだろうか?

 そんな思いを抱きながら、彼女は男性の手を取る。

 ためらいはない。ためらう必要などないのだから。

 目的は同じ。彼女もまた、彼の力を必要としていた。

 大事なものを守るため、必要なら魂だって売ってみせる。

 彼はあやかしを、〝あの男〟を憎んでいる。

 けれど、だからこそ信用できるのだ。

 それに、彼は変わった。少し前までは、血が噴き出しそうなほど憎しみに彩られた彼の瞳を見ているだけで胸が痛み悲しくてならなかったのに、今はそれが和らいでいる。

 星合いの空のもと、彼女は差し出された男性の手を強く握った──。