多くの国を巻き込んだ世界大戦が起き、その戦争は各国に甚大な被害と悲しみを生み出した。

 それは日本も例外ではなく、大きな被害を受けた。

 復興には多大な時間と労力が必要とされると誰もが絶望の中にいながらも、ようやく終わった戦争に(あん)()もしていた。

 けれど、変わってしまった町の惨状を見ては悲しみに暮れる。

 そんな日本を救ったのが、それまで人にまぎれ陰の中で生きてきたあやかしたち。

 陰から陽の下へ出てきた彼らは、人間を魅了する美しい容姿と、人間ならざる能力を持って、戦後の日本の復興に大きな力となった。

 そして現代、あやかしたちは政治、経済、芸能と、ありとあらゆる分野でその能力を発揮して地位を確立していた。

 人の世界で力を持ちゆくあやかしたち。

 そのほとんどが人との共生を望み、協力を惜しまなかったが、人間に罪を犯す者がいるように、あやかしにもまた罪を犯す者がいる。

 それは、人とあやかしという種族の違いはあれど、同じだ。

 されど、あやかしは人ならざる力を持っており、力を持たぬ人間が太刀打ちできる相手ではない。

 このまま放置すれば、あっという間に人とあやかしのバランスは崩れてしまう。

 そんな情勢の中、害なすあやかしを取りしまるふたつの家があった。

 ひとつは、人間でありながら神の血を引くとされている(いち)(りゅう)(さい)

 神に通じる強い霊力を持ち、対あやかしのための国家機関『(ほし)(かげ)』を作った。

 そこには陰陽師のように力を持った人間たちが集い、一龍斎は彼らをまとめ上げていた。

 もうひとつは、あやかしの中で最も強く美しいとされる、あやかしの頂点に立つ鬼の一族、(あま)()(づき)

 もともと、あやかしが表の世界に出てくる以前より、あやかし界の秩序を守り、『裁定者』と呼ばれていた家だ。

 天鬼月は、人との共生を望むあやかしの代表として、星影とともに協力体制を取ると表明した。

 とはいえ、決してなれ合うわけではない。

 それぞれに、人間として、あやかしとしての(きょう)()があり、二家が交わることはなかった。

 けれど、ふたつの家にも転機が訪れる。

 あやかし最強の鬼である天鬼月と神の血を引く一龍斎に生まれたふたりは、まるで星の巡りに導かれるようにして出会う。

 これまで同じ役目を持ちつつも、決して交わることはなかったふたつの家に生まれたふたりの出会いが、これからどんな未来を紡いでいくか、今はまだ誰にも分からない。