おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 ◇長官視点◇


 「一番魚雷着弾!―――前方の聖騎士を撃破!」

 報告と同時に前線の聖騎士どもが爆炎に包まれ、土煙の中で吹き飛んでいく。
 地鳴りとともに、甘美な叫び声が響いた。

 「よし、続けて二番発射!」

 本艦より、ズズズという発射音が艦内に響く。
 地中を這う魔導土魚雷が獲物を求める獣のように突き進み、再び閃光を伴って炸裂。
 爆炎に巻かれた左舷の聖騎士たちは、ひとたまりもなく地に伏した。

 「クハハハっ! 見たか、これぞ魔導技術の勝利だ!」

 これだ、これなのだ! 俺が見たかった光景は!
 俺は高らかに笑う。

 「剣や盾など、時代遅れの遺物にすぎん! 旧世代の聖騎士どもなど、この新兵器、魔導潜水艦G201(グラウンドクラーケン)の前には塵芥同然よ!」

 最高の気分だ。

 「潜望鏡に新たな影を視認! 聖騎士です!」
 「魔導ソナーでも確認、数6名!」

 一部の聖騎士どもが、集まり始めたか。
 むぅ……放った魔物を全て始末するには早すぎる。近場にいた隊が異変に気付いたのかもしれな。

 まあいい―――

 「増援といってもわずか6名だ! 攻撃続行!」

 「三番、四番、魔導土魚雷―――装填完了!」
 「発射せよ!」

 再び土を裂き進む二本の魚雷。

 「三番魚雷着弾!―――右舷の聖騎士を撃破!」

 そうだ、これでいいのだ。
 さて、聖騎士どももあらかた片付いたか。本艦を浮上させて、聖女捕獲に……

 「ちょ、長官っ!」
 「なんだ騒々しい」
 「四番魚雷、せ、聖女の【結界】に防がれた模様、聖騎士への被害は軽微!」

 「なんだと……?」

 ありえん。魔導土魚雷は【結界】ごと粉砕するはず。大聖女の【結界】ならともかく、ひよっこ聖女どもの【結界】などで防げるものではない。
 俺は苛立ちを噛み殺す。また開発部のやらかしか? 規定値の火力を保持しろと散々言ったのに、ムラのある魚雷を作りおってからに。

 「一番、二番、魚雷再装填完了!」

 いいだろう……

 「よし、一番はいつも通り聖騎士へ。二番は―――前に出た聖女に向けろ」

 「えっ、よろしいのですか? 聖女を直接攻撃など……」
 「かまわん! どうせ奴らは後方にうじゃうじゃいる。一人二人消えても問題なかろう。むしろやつらの士気を叩き折る絶好の獲物だ!」

 俺の命令通り、魚雷が発射される。

 「一番魚雷―――またも聖女の【結界】により爆散!」
 「二番魚雷―――聖女直撃コース!」
 「潜望鏡より視認、【結界】が展開されている様子はなし!」

 やはりな、一発防ぐのでギリギリなのだろう。
 俺は口角を吊り上げた。

 「くひひひ……仕留めたぞ、小娘! 爆ぜろォ!」

 カウントが始まる。

 「着弾まで―――五、四、三……」

 だが。

 「どうした? 報告せんか! 聖女は吹っ飛んだのか!」
 「い、いえ! 爆音と振動を確認……ですが、聖女および聖騎士に損害なし!」

 「なに……?」
 「魔導土魚雷は地中深度十で爆発した模様! 外部から正体不明の強烈な圧力で地中に押し戻された可能性が……」

 「馬鹿な、そんな芸当……重力魔法でも使われたか? いや、それでもあの深度での爆散は……」

 どこのどいつか知らんが、ふざけた真似をしてくれる。

 「よかろう、正体不明だろうが関係ない。叩き潰すまで! 次弾発射だ!」
 「了解!―――三番発射!」

 我らが魔導技術の恐ろしさを思い知らせてやるわ。

 再び地中でうねりをあがる土魔導魚雷。
 魚雷本体に小型の土属性フィールド発生装置を装備、さらに魚雷の中には爆発性の高い魔力を圧縮、そして直進軌道だけでなく、目標を追尾できる自動土中航行技術。

 これは我らの研究成果の結晶なのだ。

 絶対に負けぬ最強の魔導兵器なのだ!!

 「―――三番魚雷、またしても土中に押し込まれました! 爆発不十分!」


 何だとぉ……


 続けて発射した四番も同じく、何者かに粉砕される。
 馬鹿なぁ! 

 いったい地上になにがいるんだ? 
 伝説の聖騎士か? 歴戦の勇者か?

 潜望鏡からの報告が艦内に響く。

 「ちょ、長官! 前方に敵影!……お、おっさんが、木刀を持ってます!」

 「はあ!? くだらん冗談はやめろ! 再度目視確認せよ!」

 おっさんだと? なにを言ってるんだ? こいつ、ちゃんと視力検査を受けているのか?

 「い、いえ……長官。やはりおっさんです!」
 「なんだと! よく見ろ!」
 「なんど見てもおっさんです!」


 ぬぅうう……ふざけやがって!


 「一番、二番を同時発射だ! おっさんごとき、粉々に爆砕しろぉおおお!!」

 二本の魚雷が同時に発射される。
 最高技術を詰め込んだ魔導兵器を二発同時だ。
 おっさんだか木刀だか知らんが、完全に木っ端みじんにしてくれる。

 「―――全弾命中!」

 程なくして着弾点から、ズーーンと船体まで揺れが届く。

 よし、この威力……フハハどうだ。

 「魔導ソナーに反応あり! ―――おっさん健在! ダメージ皆無!」
 「潜望鏡にて目視確認! 二発とも木刀で……叩き壊されました!」

 「な、なんだとぉおおお!? なぜだ! ありえん、魚雷再装填! い、いそげ!」

 信じられん……魔導土魚雷を木刀で粉砕するだと!?
 意味が分からん。

 「あれ?」
 「どうした、潜望鏡でおっさんの位置を確認しろ!」
 「それが、おっさんが巻き上げた粉塵で、視界不良であります!」

 「―――おっさん、ロスト!」

 ぐっ……位置が分からんのでは、魚雷を発射できん。

 「ソナー! 位置を特定しろぉ!」
 「魔導ソナー探針音に反応あり! ……っ、長官! おっさんが……」
 「どこだ!」


 「――――――頭上です! 本艦の真上にいます!!」


 「なんだとぉ!」
 「おっさん、木刀を……振りかぶっています!」


 そして、ゴゴゴゴッ―――という凄まじい地鳴の直後―――


 艦全体を叩きつける轟震。
 魔導地震計の針が振り切れ、機関室の警報が鳴り響いた。

 「直上より強烈な衝撃! 船体損傷多数!」

 「ば、馬鹿な……土属性の大魔法でも、ここまでの揺れは……! あれは、本当に人間かぁあああ!」

 次々と報告が飛び込む。

 「第二、第三、第九区画に亀裂!」
 「―――船尾損傷! 土漏れ発生! うわぁああ!」
 「こ、こちら機関室!―――土属性魔力フィールド、出力減退! 魔導エンジン、魔力漏れ発生!」

 「長官! このままでは周囲の土圧に耐えられません! 船体崩壊の危険あり!」

 馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁ! 

 木刀のおっさんごときに本艦が……

 「……くそぉおお!」

 俺は戦闘帽を叩きつけた。

 「本艦はこれより浮上する! ――――――地上戦闘の用意だ!」

 「緊急浮上、全バラスト解放!!」
 「総員、地上戦闘準備! 繰り返す、総員地上戦闘準備!」

 まさか……たったおっさん一人のために浮上する羽目になるとは。

 「おい、たしか例の新型が積んであったな」
 「はっ! 一体のみ試作機ですが」


 おっさんめ、こうなったら―――地上で決着をつけてやる!