おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「聖女よ、我が声に応えよ。その加護、今こそ熱き矢と化せ……!
 ――――――聖高速火矢(フラッシュファイアーアロー)!」

 「聖女よ、我が声に応えよ。その加護、今こそ月影をまとい沈黙の刃を敵の心へ!
 ――――――月影の聖短刃(ルナ・セイントスティレット)!」

 バレッサの炎矢とレイニの短刀が同時に放たれた。
 2人が攻撃した場所は、さきほど声がした木のそばだ。

 ―――ん! 

 2人の攻撃に手ごたえは無し……移動したな。
 だが、他の聖騎士たちが退路を断つべく、通路をふさぐように各所に布陣する。

 『クソ! やむを得ん応戦だ―――雷撃筒(サンダーバレル)、魔力充填!』
 『『―――了解! 小隊長!』』

 再び、なにもない空間から声が響く。
 次の瞬間、なにやらバチバチという不気味な音が耳に入ってきた。
 なにかやるつもりだな。俺はティナをうしろに下がらせる。

 『―――各自、射撃はじめ!』

 その声と共に、なにも無い空間からバチッと音を立てて、こちらに何かが飛んできた。
 なんだこりゃ? 光の玉か?

 バレッサとレイニは素早く回避行動をとり、直撃を避ける。

 「キャアア―――!」

 仲間の一人が避けきれず、その場で片膝を地につけた。

 「大丈夫か」
 「え、ええ……直撃は避けました。雷撃魔法を凝縮したような攻撃です……」

 命に別状はないようだ。が、身体が痺れている。
 なるほど、雷のつぶてみたいなもんか。

 バンッ! バチィイインッ!!
 再び雷撃が走り、稲妻の弾が飛んでくる。俺は弾を避けつつも、敵の正確な居場所を探ろうとするが……

 「先輩! 敵は射撃と同時に移動してるっす!」
 「ふひゃぁ! また飛んできたぁ!」

 バレッサとレイニも負けじと応戦するが、攻撃はすべて空振りに終わる。

 『クハハ、どうだ聖騎士ども、我らが魔道具の恐ろしさ思い知ったか!』

 「くっ……当たらないっす!」

 バレッサたちが苦戦の声をあげる。
 ふ~む、俺も気配だけでは正確な場所まではわからんし……よし!


 「こういう場合は、こうするのがいいんだ! 
 全員目をつぶれぇええ―――――――――ぬんっんんん!」


 俺は木刀を地面に叩きつけた。


 ドゴォオオオ!


 乾いた衝撃音と共に、土埃が一斉に舞い上がる。
 ばーーっと、砂粒が跳ね返り。一気に空から降り注いていく。そこに―――ぼんやりと、人の輪郭が浮かんできた。
 砂煙が彼らの体にまとわりつき、三人分のシルエットがくっきりと浮かび上がった。

 「な、なんだこれは!?」
 「しょ、小隊長! 身体が……」
 「ばかなぁ……我らの遮蔽魔道具をこんなくだらないことで……」

 うっし、ようやくお目見えか。

 「ボクレン様! すごいです!」とティナがうしろで歓声を上げる。
 「俺のいた森には、擬態や透明化する魔物なんてざらにいたからな」

 「ふ、ふざけるなぁあ……総員、あのおっさんを狙え!」

 筒のようなものを構える3人。あれが雷を出している道具か……
 だが、姿を現した以上――――――

 腰を落として、地をひと蹴り。

 「ぬんっ!」

 一人目を木刀で叩き伏せる。

 「―――ぎゃんっ!?」

 短い悲鳴を上げて、その場で崩れ落ちる敵。
 そんなもん撃たせるほど、悠長には待たんよ。

 「キャッ……ボクレン様……!」

 ティナが目を丸くする。人が倒れるのを始めて見たのだろうか。

 「ああ、安心しろティナ。峰打ちだ。殺してはいない」

 「えぇ……でも今、バキボキってすごい音してましたけど……」

 と隣にいたレイニが引き気味に呟く。かるく叩いただけだから、大丈夫だと思うんだが。
 倒れた男の腕輪が壊れ、砕け散った。輪郭だけでなく、その身体全体がスーっと現れた。

 「これで姿を消していたのか。凄い道具だな」

 「くそっ……よくも仲間を!」

 「―――ぬんっ!」

 再度筒を構えようとした敵に一気に間合いを詰めた俺は、二人目を壁に叩きつける。

 「ぎゃぎゃんっ!?」

 地面に落ち、ヒクヒクと身体を痙攣させる二人目。

 「ひぃぃ! な、なにが峰打ちだ! この木刀サイコ野郎! に、逃げ―――」

 その言葉か終わる前に、最後の1人も地に崩れ落ちた。
 魔道具での攻撃は凄かったが、個人的な身体能力はさほど高いやつらじゃなかったな。

 木刀の埃をはらっていると、伝令らしき聖騎士が叫びながら走りすぎていく。

 「聖騎士は魔物を討伐次第、中央広場に集合!
 外に出ている聖女もだ! 教室にいるものはそのまま待機!」

 なるほど、たしかに魔物がうろついているなか教室に戻るよりは、広場に集めた方が守りやすいってことか。
 地に倒れる3人の男から情報を引き出したいが、眼球が明後日の方向を向いている。ちょっと手加減をミスったかもしれん。

 ここで時間を食うわけにもいかんか……

 「バレッサ、レイニ。お前たちはティナを守りつつ、先に中央広場へ行ってくれ」
 「了解っす! こいつらのことも隊長に報告するっす!」
 「ボクレン様は……?」

 ティナが心配そうに問う。

 「俺は残りの魔物を片付けてから行くよ」

 「……わかりました! でも必ず来てくださいね!」

 ティナの瞳を見て頷き、俺は木刀を握り駆け出した。