おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「ふぅう……今更ですが、私とんでもない人を聖騎士にしちゃったんだ」
 「それはワタクシも同じ気持ちですわ。ボクレンは常に予想のさらに上をいきますもの」

 しばらく固まっていた聖女たちの瞳に、生気が戻ってきた。

 「ふふっ……」

 お互いに顔を見合わせ、クスッと微笑みあう二人の聖女。
 おお、なんかいつもの二人に戻ったな。

 あと一人、聖騎士のレイニは……

 「…………ふ……ふはぁ……とぅんっ! とぅんっ!」

 ダメだ! なんかビクビク痙攣し始めてる!
 小刻みに震えて、泡でも吹きそうな勢いだぞ!?

 「はぁはぁ……耐性ついてたはずなのにぃ。セシリアさんとアレシーナさんより戻りが遅いなんて……」

 タイセイ? モドリ?

 とにかくちょっと休ませた方がいいな。

 レイニを木陰で寝かせて、俺たちは焔玉果(レインボーフレアフルーツ)を収穫していく。
 バックパックに実をしまうたび、カラン……と鈴の音みたいな余韻が広がった。果実の表面は透き通るように艶やかで、光を浴びると七色の輝きを放つ。

 「わぁ……キレイ……! まるで夜空を閉じ込めた宝石みたいです!」

 セシリアが焔玉果(レインボーフレアフルーツ)を両手で大事そうに抱え、頬ずりしそうな勢いで見つめている。

 「そうですわね……。でも宝石と違って、命を燃やしているように見えますわ。ほら、果実の芯から小さな炎がゆらめいているようですもの」

 アレシーナが真剣な顔で実を覗き込み、その綺麗な目を細める。

 「うむ。いいこと言うな」

 おっさんも思わず頷いた。
 確かにこれはただの果実じゃない。生きた光そのものだ。

 「よし、ちょっと実を割ってみるか?」

 「え……いいんでしょうか?」
 「これだけあるなら、ひとつぐらい大丈夫だ」

 俺は木刀をスッと抜く。

 「ぬんっ!」

 かるく実を木刀で叩くと、パカッと実が割れる。同時に―――

 パァンッ!

 綺麗な虹色の火花が散って、辺りが一瞬だけ花火大会に変わった。
 昼間なのに、強烈な光の輝きが映える。


 「「わぁ~~っ!」」


 思わず歓声をあげるセシリアとアレシーナの瞳が、星みたいにキラッキラ光ってる。
 な? おっさんが木刀で軽く割っただけでこれだぞ。
 魔力を込めて夜空に打ち上げれば、そりゃもう祭り会場どころか王都中が歓声上げるレベルだろう。

 「……やりますわ」

 アレシーナが真剣な眼差しで焔玉果(レインボーフレアフルーツ)を握りしめる。

 「必ず優勝してみせますわ」

 その隣で、セシリアもギュッと拳を握り―――

 「これを夜空に打ち上げたら……絶対にみんな驚きますよ!」
 「いいえ、驚かせるだけでは足りませんわ。魅了してやりますわ……必ず」

 決意の表情を見せる2人の聖女。
 聖女ふたりの目は、焔玉果(レインボーフレアフルーツ)に映る虹色の光を宿してキラキラ輝いていた。
 まあ、あんなもん見たら、そりゃ気合が入るよな。

 だがまあ―――これでいい。
 おっさんの仕事は、彼女たちが全力を出せるように道を切り拓くことだ。

 木刀を肩に担ぎ、俺はにやりと笑った。

 「よし―――学園に帰るか」


 おっさん、大満足の帰郷であった。



 ◇◇◇



 聖女学園、エリクラス隊長の執務室にて。

 「お疲れさまでしたボクレン。それに聖女セシリアとアレシーナも」
 「で、どうだった? 見つかったのかボクレン?」

 リンナ副隊長がせっついてきた。
 まあまあ、待ちなさいよ―――よっと!

 俺はバックパックを机の上に置く。
 セシリアたちもそれに続き、次々に置いていった。

 「どうだ? まあまあ獲れたぞ」

 「…………」
 「…………」

 あれ? なんか反応ないな……って!!

 瞳からハイライトが消えたんだが!?

 なぜかフリーズした、エリクラスとリンナ。
 もしかしてこれじゃないのか? もしくは少なすぎたか?

 「えっと……すまん! もっと獲って来る!」

 執務室から飛びだそうとした俺は、リンナに進路を阻まれた。

 「も、もういい! 山盛りにもほどがある! これで勘弁してくれ、ボクレン!」

 「え? 足りないんじゃないのか?」
 「じゅぶんすぎますボクレン。まったく……ちょっと目を離すとこれですか……」
 「貴様というやつは……たまには予想の範疇におさまってくれ」

 うむ、どうやらこれでいいらしい。若干呆れられているが。

 「ボクレンさんたちがぁ~帰って来たんですってぇ~~」

 あ、この間のびした声は。
 マシーカ先生が、執務室に入ってきた。

 次の瞬間……先生の瞳からもハイライトが消えた。

 またかよぉ。
 何回フリーズするんだ。流行ってんのか、これ。

 「ところでレイニはどうしましたか?」
 「ああ、彼女なら少し疲れてしまってな。報告は俺がやるからって休ませたよ」

 レイニのやつ、虫嫌いなのか、ゴブリン嫌いなのか、トカゲ嫌いなのか、原因は定かではないがすさまじく消耗してたからな。森の空気が合わなかったのかもしれん。
 そこへ再び扉の開く音……聖女マルナが入って来た。

 「失礼します。マシーカ先生がこちらにいると聞いて……あ、セシリア! アレシーナ!」

 再会を喜ぶ聖女たち。マルナの手にはメイド服が握られていた。
 おお! 完成したんだな。
 服を体にあわせて、キャッキャウフフする美少女たち。なんだろう、おっさんも楽しみにになってきた。ウキウキってやつだ。

 学園祭は、たしか1週間後だったな。

 「あ、そうでした。ボクレン、あなたに手紙がきてますよ」

 エリクラス隊長から一通の封書を受け取った俺。
 うわぁ……見たくない刻印ついてるぅうう……

 ヤバい、思い出した。

 そうだった。森ではしゃいですっかり忘れてたけど。
 ガサガサと取り出した厳かな便箋に目を通す。


 『わたしのボクレン様~~学園祭、行きま~~す♪ 
 あなたの第三王女ティナより♡』


 よし、とたんにウキウキしなくなったぁ。