おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「――――――ギュラォオオオオ!」

 あれがドラゴンだと? 

 「なにを言ってるんだ。大丈夫かみんな?」

 「それは、こっちのセリフですよ!?」

 「え? なに言ってんだ。トカゲだろ?」

 「いやいやいやいやいや、だれがどう見てもドラゴンですよ!?」

 いやが多いな。
 あの外見に鳴き声は、間違いないくトカゲなんだけどな。

 「ボクレンさん、すごく納得いかない顔してますけど、ドラゴンですからね」

 ドラゴンの一点張りだな。
 あ……セシリア、いつもの教科書を持ってきてないぞ。

 「教科書を見なくてもドラゴンです!」

 くっ……心を読むとはさすがセシリア。どんどん成長しているな。

 う~~ん、にしても、あれがドラゴンなわけはないぞ。
 ドラゴンてのは、もっとヤバいところに住んでるやつだ。こんな普通の森にはいないし。

 「あ、そういう名前のトカゲなのか? 赤トカゲだろ?」
 「レッドドラゴンです!」

 どうみても赤トカゲなんだよなぁ。それ以外のなにものでもない。
 あれがドラゴンなら、おっさんはドラゴンスレイヤーになってしまうぞ。

 「セシリア、意地を張っている場合ではないですわ。赤トカゲでもなんでもよくてよ!」
 「うわぁ~~ん、死んだぁ、もう死んじゃったぁ、彼氏もできたことないのにぃいい!」

 アレシーナが叫び、レイニはがん泣きしている。

 「わかりました、ボクレンさん。呼び方は好きにしてください! とにかく倒しましょう!」

 「おお、了解だ、セシリア!」


 「――――――グォオオオオォオオ!」


 「ボクレン、レッドドラゴンが……大木の焔玉果(レインボーフレアフルーツ)を食べてますわ!」

 まずいな……あそこで木刀振ると実が全部落ちてしまうかもしれん。
 あれは衝撃に弱いから、丁寧に収穫しないと全部パーだ。衝撃で実が弾けてしまう。
 あいつを大木から離さんと。

 「アレシーナ、セシリア。俺とレイニで赤トカゲの注意を引くから。【結界】で身を守れるか?」

 「もちろんですわ!」
 「はい、ボクレンさん!」

 よっしゃ、いい返事だ。

 「よし、いくぞレイニ、陽動作戦だ!」
 「ふぇええ、わかりましたよぉおお~~こうなったらヤケですぅ!」

 その俊足を飛ばして、一気に赤トカゲの前にでるレイニ。
 うむ、普段の感じに戻ってきた。やる時はやる子だ。

 「あんたなんか怖くないよぉおおだ!
 聖女よ、我が声に応えよ。その加護、今こそ月影をまとい沈黙の刃を敵の心へ!
 ――――――月影の聖短刃(ルナ・セイントスティレット)!」

 透き通るような短剣が数本現れて、赤トカゲに向かって放たれる。

 「ギュラォオオオオ!!」

 うまい! 真正面だけでなく、多方向に軌道を変えて投げたな。
 よし、こっちに注意が向きはじめた。


 「――――――グゴォオオ……」


 「レイニ、食事を邪魔されたんだからくるぞ」
 「へぇ? くるってなにが……って、ふぁあああ!?」

 その言葉が終わる前に、俺とレイニの間にデカい火球が轟音を立てて通過した。
 赤トカゲ十八番の火炎弾だ。

 火球はそのまま森の奥へ飛んでいき、―――ズトォオオ! という爆発音を立てて森の一部を吹き飛ばした。

 「なにあれぇええ……もう火魔法とかの次元じゃないんですけどぉお!」

 「グゴォオオ!」「グゴォオオ!」「―――グゴォオオ!!」

 怒り狂って火球を四方八方に滅多撃ちするするトカゲ。

 レイニは「ひぃいい、ごめんなさぃいい!」と叫びながら避けまくる。おお、いいフットワークだ!


 「天を照らす聖なる光よ、闇を切り裂き、絶望を払う盾となれ!
 我が祈りに応え、我らの歩みを阻む邪悪を退けよ。
 顕現せよ――――――結界(セイクリッド・バリア)!×結界(セイクリッド・バリア)!」

 アレシーナの2重詠唱か……すげぇな【結界】を二重に展開したぞ。
 セシリアもその上に【結界】を重ね掛けする。

 赤トカゲはこちらに攻撃を仕掛けてくるものの、大木の傍から離れないな。
 う~む、木刀振ってもいいんだが、木が近すぎる。
 レイニの挑発にもこれ以上は乗ってこないようだ。

 「ボクレンさぁ~~ん、早くなんとかしないとぉ~聖女さまたちがぁ~」

 火球を避けながらレイニが叫ぶ。

 赤トカゲの火球はセシリアたちにも放たれている。

 「あ、アレシーナ! ご、ごめん!」
 「いいですわセシリア! ワタクシの【結界】で食い止めますわ! あなたは次の詠唱をなさい!」

 セシリアの【結界】が崩壊したのか。これはいったん彼女たちのところへ戻った方が……? んん?
 なんかアレシーナの【結界】……いつにも増して赤くないか?

 元より彼女の聖属性魔力は少し赤い。だが、ここまで赤いのははじめてだな。

 「あ、アレシーナ。【結界】が……なんですかこれ! 火球と共鳴している!?」
 「ワタクシにもわかりませんわ! な、なぜか火球の魔力が流れてきて……」

 さらに赤くなる【結界】。だが崩壊の兆しはないように見える。


 「グルゥウ? ――――――ギュラァアアアアア!!」


 おっと、赤トカゲは気にくわないらしいな。

 「あ、アレシーナ! レッドドラゴンがこっちへくる!」
 「わかってますわ! 落ち着きなさいセシリア!」

 動いたな、赤トカゲ。

 残念ながら俺の天使たちに、手は出させないぞ。

 「―――ぬんっ!」

 「ギュガァアア!」

 俺は赤トカゲを背中ら叩き伏せる。

 地面に叩きつけられたトカゲが軽くバウンドしたところを―――


 「――――――ぬんんっ!」


 「ギュラァアァ……アアァ……ァ……」

 よし、《《こいつは》》片がついたな。


 「す、凄いボクレンさん。レッドドラゴンを木刀で倒しちゃった……」
 「まったく、相変わらず無茶苦茶ですわ」

 「ふぇええ、た、助かったぁ~~生きてるぅ、私動いてるぅう」

 2人の聖女と、1人の聖騎士が俺のもとに駆け寄って来た。

 「みんなよく頑張った。さっそく実を回収したいとこなんだが……」
 「え? なにかあるんですか?」

 ちょっと時間をくいすぎた。

 「またくるぞ」

 「え、え、またくるって……ボクレンさん」
 「じょ、冗談ですわよね……ボクレン」
 「なになに、ボクレンさん、また変なこと言い出したんですかぁ」

 冗談も変な事も言わんさ。

 ほら来た。

 「ギュルウウウウウ!」
 「ギュラァスゥウウウ!」
 「ジュラァアアアア!」

 翼を広げて上空から接近してくる影。

 「赤トカゲはけっこう群れるんだ」
 「ボクレンさん……」
 「大丈夫だセシリア。あれもさっきと同じトカゲだからな」

 「あれ……ドラゴンです……全部」

 「――――――ギャァア! いっぱいきたぁああ! 今度こそ終わちゃぅううう!! もういいやぁ~~うえへへへぇ~」


 やばい……レイニが壊れた。