おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「凄いぞボクレン、元剣聖さま相手に引き分けとはな!」

 闘技場から降りた俺に、リンナが興奮した声をあげる。

 「ボクレンさん、カッコよかったです!」
 「素晴らしい試合でしたわ。ボクレン!」

 そして俺の天使たち聖女2人も満面の笑みだ。

 「いやぁ……なんとか試合になったな」

 にしても……

 とんでもないじいさまだった。
 もう随分と歳なのにあの強さだ。現役であったなら、俺は即ボコボコにされてただろう。

 ふぅ……久々にやり切った感があるな。
 すがすがしいぜ。

 「さあ、ボクレンさん行きましょう」
 「そうですわね」

 2人の聖女が手を差し伸べてくる。
 やだ。超かわいいんですけど。この子たち。

 「うむ、帰るか」

 さぁ~~ヤバイ仕事も終わった! やったぜ!
 あとはエールでも飲んで……

 「え? 帰りませんよ」

 ……んん?

 「いや、学園に帰るだろ。なんか寄り道したいのか?」

 そうか、このまま飲み屋にGOという選択肢もあるのか。
 いやいや、この子たちの護衛任務があるしな。飲むのは夜まで我慢だ。

 「だって今から晩餐会ですよ。ちょっと早いですけど」

 はいぃ?

 バンサンカイ?

 「そうですわよ。王族のみなさまとお食事ですわ」


 聞いてないよぉおおおおお!


 「ええぇ……そんな話あったのか?」

 ないよ、試合して終わりだよ。

 「だって言ったら、ボクレンさん逃げるから」
 「試合に集中できましたでしょ?」

 はめられたぁああああ。

 くぅ……こんな天使なのに、こんな綺麗な花なのにぃ。
 おっさんを陥れるなんて……。

 王族と飯とか無理だって。

 マジで。

 ああ、全然すがすがしくねぇ。

 「まあまあ、そばに私がいますから」
 「それに、王族の方が隣にくることは流石にないと思いますわ」

 セシリアとアレシーナが「大丈夫ですよ」と微笑む。

 「しかし、貴様のマナーでは学園聖騎士の恥になりかねんな……」

 リンナの言う通りだ。
 おっさん、晩餐会とか出たことない。ていうかお貴族さまと食事とかしたことないんだよ。

 「それはワタクシに任せなさい」

 アレシーナがズイと胸を張る。

 「マナーなら安心なさい。ワタクシがボクレンの横につきますわ」

 「なるほど、聖女アレシーナならば熟知してそうだな」
 「たしかに、アレシーナさんは夜会の経験も多いでしょうし。これで万全ですね、ボクレンさん」

 アレシーナ、セシリアぁあ。
 なんて優しい子たちだろ。おっさん泣きそうだよ。

 「うん……がんばる」

 「まったく、凄いのかただのおっさんなのか、本当にわからんやつだな」

 リンナ、ただのおっさんだからな。

 とにかく、おっさん精神は持ち直した。
 ようは飯食って帰ればいいだけなんだろ。

 ―――よしっ! 行くぞ!

 この気持ちのまま、乗り切る!

 と思っていた矢先―――


 「ああ、あそこにいました! ボクレン様ぁ~~♪」
 「ひ、姫さまっ、そのような……はしたないですよ!」


 なんかドレスをまくり上げて、全力疾走してくる娘がおるんだが。

 うしろから必死に追いかけるメイドさん。ヒメサマ言うてますやん。

 「まあまあ~~先ほどの試合~~最っ高ううでした!」

 と叫びながら助走をつけて地を蹴り飛ぶ美少女。

 と、俺の前に立ちふさがる影2つ。


 「「――――――姫殿下! お待ちください!!」」


 息もピッタリに、跳んできたお姫様をブロックせんとするセシリア、アレシーナの2人。

 バルルルン!!

 お、おい……こ、これは!?

 セシリアとアレシーナのデカい膨らみと、これまた負けず劣らずの姫様膨らみがブルンと揺れる。
 跳んでる姫様が「むむっ、上等です!」と言いながら、セシリアとアレシーナの膨らみにダイブした。

 6つの膨らみが互いの存在を主張し合う。

 バル、バルルルン!!

 ふはぁ……こ、これは凄い戦いだ。

 セシリア・アレシーナ連合が、お姫様を押し返した。バルルルンって音とともに。

 「ひゃん!」

 姫様がうしろに弾き飛ばされる。

 いかに姫のモノが凄いと言っても、セシリア・アレシーナも規格外なのだ。
 勝負ありだな……って!

 これは飛びすぎなのでは?

 俺がサポートに入ったほうが良いのだろうか。
 でも、おっさんがお姫様さわったら、即打ち首ものではないのか……!

 「ボクレン、おまえはさわるな!」

 そんな俺の気配を察してか、リンナが素早く移動してバルんと弾かれた姫様を受け止めた。

 「あんっ!」

 衝撃に姫様が変な声をもらす。
 ついでに、ブルンブルン揺れとる。

 勝敗は決したかに見えたが、まだまだやる気ということなのか。

 だが、次の瞬間おっさんの視線は顔ごと姫様から外された。
 ぐりんと回された方向には2人の美少女が。

 「どこ見てるんですか? ボクレンさん」
 「ワタクシので不満ですの?」

 一戦交えた歴戦の勇者……じゃない、聖女2人だ。

 「い、いや……みんな無事で良かったなって……」

 もの凄いジト目を二人から浴びせられる。
 だって、見るなって方が無理なんだよぉ。

 ふぅ……とにかく、事なきは得たようだな。
 おっさん、とんでもない試合を見させてもらった。

 「ひ、姫様ぁああ~~~はぁはぁはぁ、急に走り出してはなりません……はぁ」

 メイドさんが、肩で息をしながらようやく追いついた。

 おそらくはヤンチャなお姫様なんだろう。
 試合前の挨拶時には、猫をかぶっていたってわけか。大変だな、このメイドさんも。

 リンナから降ろされたお姫様。

 ドレスをただして、お人形さんのような整った綺麗な顔をこちらへ向ける美少女。

 「改めまして、ティナ・ロイ・ルハルトです! ルハルト王国の第三王女やってます!
 気軽にティナって呼んでください♪」

 陽光を受けてきらめくエメラルドグリーンの髪が、肩の後ろで元気よく跳ねた。
 歳はセシリアたちより1つ下の15らしい。
 髪色と同じ色の瞳は宝石よりも鮮やかで、面白いものを見つけた猫のようにきらきら輝いている。

 王族のドレスを着ていても、どことなく落ち着く気配がなく今にも駆け出しそうだな、この子。

 あとデカイ……

 なにがってのはもう言わん。

 「あ、ああ。よろしくティナ」

 「「姫殿下……ご機嫌麗しく」」

 セシリアとアレシーナがそろってカーテシーを披露する。

 「まあまあお二人の聖女様、かたいのはなしでいいわ。にしても……さきほどは素晴らしいファイトでしたね。わたしの愛を止めるなんて」

 「姫殿下こそ、素晴らしいモノをお持ちですわ。ですがボクレンはワタクシの聖騎士ですの」
 「姫様が殿方に飛び付こうとするなんて、ダメだと思います」

 「まあまあ、手厳しい聖女様たちですね。第二戦が楽しみです♪」

 「「こちらこそ♪」」

 良く分からんが、なんかバチバチしてらっしゃる。
 3人とも度がつくほどの美少女笑顔だが、内から漏れ出る気配がヤバすぎる……怖い……

 とにかくおっさんは姫殿下と距離を取ろう。
 そしてさっさと飯食って、帰る。
 うん、それがベストだ。

 あれ? 腕が……

 「さあさあ、参りましょう。わたしのボクレン様♪」

 ―――!?

 速攻で腕つかまれてたぁあああ!

 しかもなんかグイグイ巻き込んでくるぅうう!!

 「あ、あの王女殿下……近すぎると思うのだが」
 「あら、いやだボクレン様。ティナってお呼びになって」

 「えっと、ティナ。もう少しだな、距離を」
 「あら、もっと近くにですって! やん、積極的です~♪」

 うおぉおお……もっと寄ってきた!

 当たってるんですよぉおお!


 持ち直したかに見えたおっさんの精神は、早くも粉砕された。