ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「あ、アビロスさま……前方から魔物が接近してきます!」

 「よし、全員戦闘準備だ! エリス! 数と魔物の種類はわかるか!」

 「は、はい。えと、2……いえ3体です……おそらくはフォレストビーです」


 フォレストビー、ハチ型の昆虫系魔物。魔物の森では低ランクのモンスター。いわゆるザコモンスターだ。


 「みんな、低ランクモンスターとはいえ油断するなよ」
 「アビロス! きます! ……っ! 大きい!?」

 ステラが驚きの声をあげる。
 上空から俺たちに接近しつつある3体の魔物。あれはフォレストビーじゃないな。

 ジャイアントビーか……

 フォレストビーの上位種。その体躯はフォレストビーの5倍以上、本来であれば奥地に行かなければ出現しない魔物だ。

 「う、うそ……なにあれ? フォレストビーじゃない……」
 
 エリスから震えた声が漏れる。

 「アビロス、想定外の魔物です。【結界】を張りますか?」

 ステラがエリスとブレイルに一度視線を向けてから、俺に確認を取る。

 「いや、ここは全員で戦おう」

 ステラの【結界】は強力だが、結界内部からはこちらも攻撃ができなくなる。それに発動に時間がかかるし、ステラ自身が動けなくなる。

 ブレイルとエリスには荷が重いと感じたのだろう。


 が、ここは全員で乗り切る場面と考える。


 「エリス、後方に下がれ! ステラはエリスの傍に! ブレイルは俺と前衛だ! 気合入れろよ!」
 「う、うん。アビロス君、僕頑張るよ!」

 よし、いい顔だ。主人公らしさが少しづつ出てきたぞ。

 ブブブ―――と、気味の悪い羽音を鳴らしながらこちらへ降下していくる3体のジャイアントビー。

 なんだ? やけに動きがおかしい?
 それによく見ると羽や胴体に無数の傷跡がある。

 「手負いだ! みんな気をつけろ!」

 手負いの魔物はより凶暴性が増している可能性が高い。

 「あ……ああ……」

 エリスの声?
 なにをやっているんだ。まだ後方に下がってないのか。

 「エリス―――!?」

 俺がエリスの元に駆けつけた瞬間、ジャイアントビーが発光してなにかの魔法が発動した。

 「錯乱の霧か―――!?」

 周辺に立ち込める霧、俺たちの視界は完全に奪われた。
 ジャイアントビーはその触覚がアンテナとなり、霧の中でも自由に動ける。

 「ステラ―――! 大丈夫か!」
 「アビロス、こちらは大丈夫です! ブレイルさんと共に周辺を警戒しています!」

 とりあえず2人は無事らしい。
 しかしこの霧……ジャイアントビーがどこにいるかまったくわからん。

 「エリス、探知魔法で敵の位置をさぐれるか!」
 「………」
 「エリス?」

 ブブブ―――
 ブブブ―――

 魔物の発する独特の羽音に、エリスの顔がどんどん青く染まっていく。

 ―――ひどく怯えている。まあ魔物自体をはじめて見たのならしょうがない。
 こうなったら、ジャイアントビーから仕掛けてくるのを待つしかないか。

 「エリス、絶対にそこを動くな―――」

 俺はエリスの前に立ち、【ダークブレイド】を構える。

 いや……待てよ。

 「―――ブレイル! 聞こえるか! ライトスラッシュを叩き込め!」
 「え? でも魔物がどこにいるかわからないよう! アビロス君!」
 「当たらなくてもいい! ただし―――思いっきりいけ!」

 強烈な光を放つライトスラッシュなら、一時的だが周辺の状況を確認することができるはず。


 「う、うん……わかった!」


 いつもの掛け声とともにライトスラッシュを放つブレイル。


 光の斬撃が周辺の霧を散らして、周辺を照す。一時的に視界が開けたぞ。

 「フシャァア……!」

 魔物が苦痛の悲鳴を漏らした。
 ブレイルの斬撃はジャイアントビーの腹部を切り裂いていた。
 ちょうど攻撃しようと接近していたのか。それとも主人公チート補正が働いて命中したのか。

 「―――えいっ!」

 すかさずステラが聖杖で、ジャイアントビーの脳天を叩きつけてとどめを刺す。


 残りの2匹は―――


 ――――――そこか!!


 瞬間、俺は地を蹴り一気に間合いを詰める。

 「―――重力付与剣(グラビティソード)!」

 俺は重力を付与した【ダークブレイド】でジャイアントビーの首を斬り落とした。

 最後の一匹が上空に退避しようと羽音を増したが。

 飛ばさねぇよ―――


 「漆黒の闇よ、その禍々しき黒で押しつぶせ。
 ―――重力増魔法(グラビティアップ)!」


 重力により飛び立てなくなったジャイアントビー。
 俺は即座に【ダークブレイド】を投げつける。


 「フシャァアアアア!!」

 脳天に剣が命中して、断末魔の叫びをあげるジャイアントビー。
 ズーンと言う音と共に地に崩れ落ちた。

 「ふぅ……みんな大丈夫か?」

 「あ、アビロス君~~ぼ、ぼくなんとかやれたよ~~」
 「ああ、ブレイル。良くやった!」

 ハハッ、主人公。今回は怯まなかったな……本当に良く頑張った。

 不格好ながらもライトスラッシュを使用した攻撃。
 それにまぐれかわからんが、魔物にダメージも与えた。

 「えへへ~~アビロス君に褒められた~~」

 いつもの能天気に戻りはじめているな……まあ今日は大目にみてやろう。

 「エリスさま、大丈夫ですか」

 ステラに介抱されるエリス。
 ぐったりとしてるが、命に別状はないだろう。

 俺はジャイアントビーの頭部から剣を引き抜きつつ、思考を巡らせる。

 原作において1つ目のイベントはフォレストビーの来襲だ。
 野営中に複数のフォレストビーが襲い掛かり、これを撃退するというもの。

 しかし、来襲したのはジャイアントビーだ。来襲場所も微妙に違う。

 「アビロス、なぜこのような魔物が野営地付近にいたのでしょう?」
 「理由はわからないな……だが人を襲うために出てきたのではなさそうだな……」
 「ジャイアントビーが出てきた方角は、魔物の森の奥です」

 そう、ステラの言う通りだ。俺たちを襲うために飛来したというよりは……何かから逃げてきたような。

 「アビロス、森の奥地で何か異変が起こっているのかもしれません」
 「そうだな、ステラ。とにかく水を確保しよう。野営地に戻ったら先生に報告だ」
 「ええ、なにも起こらなければいいのですが……」

 なにも起こならければか……

 原作2つ目のイベントが今回のメインイベントだ。
 森の探索中に魔物が現れる。森といっても外周部で軽めの魔物討伐予定なのだが、そこへ奥地の魔物が出現する。

 その奥地の魔物は「ジャイアントビー」

 だがジャイアントビーはすでに現れて、俺たちに討伐された。

 ってことは……

 それ以上の魔物が出現するってことなのか?

 まあいい。

 ストーリー改変でイベント難易度が上がっていたとしても―――


 悪役アビロスのレベルも上がっているからな。