ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 食事のあと、みんなには王城に泊まってもらう事になった。この部屋に残るはわたしとお父様、そしてアビロスのみ。

 「さて、アビロスよ。単刀直入に聞くぞ、「太陽教」の目的は王族の血か?」
 「はい陛下、ただし王族の血というよりは勇者の血を受け継ぐものなら、王族に関係なく欲しているようです」
 「う~む、つまりは【光属性】を発現させるための血を欲しいてる。というわけじゃな」

 お父様は王家への恨みからの犯行とみていたようだ。
 エリスをさらった太陽教の司教とやらの死体も、瓦礫の下から出てこないとの報告を受けている。

 「あいわかった。太陽教については王国の諜報機関にて調査を続行させる。手間を取らせたなアビロス」

 エリスはやっと外の世界に興味を持ち始めたんだ。できれば今後も外出させてやりたい。がより警戒が必要だな。常にわたしが近くにもいられないし。

 「あと、ステラが気になる事を言ってました。エリスさまから魔族のにおいがしたと」


 さすが聖女だ。気づいたか―――


 「アビ、その件はわたしから話そう。いいですね、お父様」
 「うむ、仕方あるまい。聖女ステラは感づいたようじゃしのう」

 わたしはアビの瞳をみて言葉を紡ぐ。

 「エリスには、魔族が封印されているんだ」
 「なんだと……それはいつからだ?」
 「生まれた時からだ。実はエリスが生まれる際に王城は魔族に襲撃されたんだ。とてつもなく強力な魔族だ。母は自身の命と引き換えに魔族に深手を負わせたが、そいつはあろうことかエリスの体に逃げ込んだんだ」
 「それはマリーナではなくエリスさまなんだな?」
 「そうだ、わたしではない。エリスには魔族が活動できないよう封印を施したが、エリスの成長とともにやつも魔力を回復しているんだ」
 「そして、封印が破られる時が近いという事か?」
 「ああ、もう封印の魔力が持たない。あと数週間か、もしかしたら数日か、残された時間はわずかだ」
 「封印が破られた場合はどうなる?」
 「魔族が解き放たれる。まずは封印元のエリスを殺すだろう。だからわたしはエリスが殺される前に魔族を倒す必要がある」
 「う~ん、ここでも改変が……封印イベントはメインイベントのはず……それがマリーナでなくエリスさまかよ……」

 何かをブツブツと呟くアビ。
 前から思ってたんだが、アビは時折おかしなことを言う。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 今までずっと1人で鍛錬を積んできた。

 少しでも強く―――
 少しでも前に―――

 わたしのことを戦闘狂の姫とか言う奴もいる。戦い自体は好きだが、そのために鍛えていたのではない。

 わたしの目的は―――


 ―――エリスを救いたい。


 これだけだ。


 だが、日に日にエリスから漏れ出る魔力の量は凄まじかった。

 今までの経験則からわかるんだ。


 ――――――わたし1人では勝てない。


 鍛錬を積めば積むほど、それは明確になっていく。

 どうすればいい? わからなくなってしまった時だった。

 ―――現れたんだ。

 アビロスという男が。

 初めてわたしより強い男を見つけた―――


 初めて頼れる奴を見つけたんだ。


 「アビ、悔しいがわたしの力だけではエリスを救えない。
 ――――――助けてくれるか?」

 これは王家の問題。いや……わたしの問題だから、誰にも頼らない。
 そう決めていたのに。

 不思議な奴だ、この男には素直に助けを求めることができる。


 「ハハッ、当然だ。なにせ【万能タレ】を貰ったんだ。お返しはきっちりするさ」

 フフ、演技が下手くそなやつだ。そんなものに関係なく助けてくれるクセに。
 そこがわたしのお気に入りなところなんだけどな。

 まったくもって、いい男だよ。

 「ありがとう――――――アビ」
 「お……おう、えぇえ!?」

 アビを思い切りハグしてやった。
 わたしなりのお礼だ。

 「アビ、今日はわたしの部屋で一緒に寝るか? 今後の打ち合わせもあるしな」
 「ええ! い、い、一緒て……おま……いや……何言ってんだ」
 「ハ~ハッハ、冗談に決まってるだろ。何を真に受けている。これからもよろしく頼むぞ!」
 「お、お、おう……もちろん冗談ってのはわかってたぞ。じゃあ、俺は自室にも、も、もどりゅからな」

 フフ、まったくウブなやつだ。わたしとしては、一緒に寝て間違いがあってもいいんだが。
 そうなるとステラやエリスがうるさいだろうな。

 退室しようとするアビの肩をガシっと掴むお父様。

 「フォフォ、アビロス! 分かってると思うが、可愛い娘たちに間違いがあったら……ワシ切れるからね」
 「は、はい! 間違いなんて絶対に起こりませんです! 自室で誰も入れずにしっかり1人で寝るであります! おやすみなさい陛下!」

 カクカクした動きで退室するアビ。

 ふぅ……これで希望の光がみえてきた。

 「お父様……あまりアビをいじめないでやってくれ。意外にまじめなんだあいつは」
 「フォフォ、随分とあやつに肩入れしておるではないか、そんなに気になるかのう」
 「そんな風に見えるのか……こんなおとこ女のわたしでも」

 「これでも一応お前たちの親じゃ。アビロスを見る目が他の男に比べて違うことぐらいはわかるわい。あとエリスのやつもな。まったく、とんだたらし貴族じゃのう」

 そうか、わたしもわかりやすく出てたのか……

 が、そんな色恋沙汰は―――この件の方が付いてからだ!

 いずれにせよエリスの封印決壊の日は近い。出来る限り傍にいてやりたいのだが……わたしも学生だからな……

 ―――そうか! 妙案が浮かんだぞ! これはエリスも喜ぶだろう。アビの奴はびっくりするだろうが。

 楽しみにしてろよ! アビ!