魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?

 〖―――なんだこれは〗

 「ハハッ! こりゃ気持ちいいぞ!!」

 俺は体の奥底に溜まっていた炎を全て解放した。

 調整もクソもない。

 ただただ、全てを出し切る行為。


 隣で俺の手をギュッと握るリズ。

 彼女の手から俺の体に青い結晶が流れ込み、優しく包んでくれる。

 燃えない……

 暴走しない……

 「凄いぞリズ!!」

 最高濃度の炎が10本の炎を押し込んで、その巨体を真っ赤な炎で焼き尽くす。


 〖ば、ばかなぁああ!〗


 「10本っ! たしかにおまえは手強い、だが―――
 ――――――燃やせないとは言ってないぞ!!」


 ――――――ボボボボボボウっ!


 〖こ、こんなおっさんにぃいいいいい!!〗


 こりゃいいぞ。どんどん炎がデカくなる。


 ――――――ボボボボボボボボウっ!!


 〖ぎゃああああぁあぁぁぁ……ぁぁ……〗


 よ~~し、のってきた!!

 まだまだいけるぞ!!


 ――――――ボボボボボボボボボボボウっ!!!


 「ば……ス……」

 よっしゃ、【焼却】まつりだ!

 「ば、バートス!!」

 んん? 俺はリズに揺さぶられていることに気付く。

 「ば、バートス、もうじゅぶんです!」

 「え? まだまだいけるぞ?」

 「いかなくていいです!! 10本は完全に消滅していますから……」


 まじか……


 リズの言う通り、10本がド~~ンといたであろう場所には何もなかった。
 灰すらもない。

 カルラも元同僚たち、そしてアルバートをはじめとする王国軍、その場にいるすべての目がこちらを向いていた。


 しまった……やりすぎた……



 ◇◇◇



 「ひょ~~こりゃうめぇ」
 「地上の飯はこんなにうまいのかよ」
 「ガハハ~~この酒もいけるのである!」

 10本は討伐され、その脅威は去った。

 で、お疲れ様ということで現在ご飯タイムである。

 王国軍も魔族も入り乱れての晩ご飯。

 そんなに物資が余っているわけではなかったが、そこはリズが工夫して即席の料理をふるまってくれた。

 互いの健闘をたたえ合い、交流を深める者。
 勝手に飲みくらべを始めて盛り上がる者。
 聖女の手作りごはんに感激して、器ごとバリバリ食べ出す者。

 まあそれぞれだが、みんな楽しそうだ。


 ―――ん?

 袖をクイクイ引っ張られたので振り返ると。

 綺麗な銀髪を靡かせて、美少女が立っていた。

 リズだ。

 しかしなんだろうか。リズはやけにモジモジしているというか、ちょっといつもと違う様子である。

 「どうしたんだ? リズ?」


 「そ、その、バートスは楽しんでますか?」

 「ああ、もちろんだ。久しぶりに同僚たちにも会えたしな」

 「それは良かったですね。ところで……えと……
 そ、その、バートスは私の従者です……よね」

 「んん? ああ、そうだぞ」

 どうしたリズ?
 いまさらな話をしてきたが、もしかして聞きたいことは別にあるのか?

 「いえ、ちょっとした確認です。それに良く考えたら、聖女の加護である赤い制約の印もありますしね」

 制約の印?

 ああ、10日以上離れるとリズが永遠の眠りにつくとかいうやつか?

 俺の薬指にもついてんるんだったな、赤いリングが。


 ―――あれ?


 リズの方に目を向けると、彼女も自身の指をみて固まっていた。

 「おい、リズこれ……」

 「ウソ……印がない!? なんで!」

 たしかに無いな。俺の指からも赤い印が消えている。

 「とにかく良かったなリズ」

 「ど、どうして! バートスの炎が強すぎたから? だから消えちゃったの!?」

 「お、おい。落ち着けリズ」

 指を見て取り乱すリズ。俺の声もあまり聞こえてなさそうだ。
 そもそも彼女を縛っていた制約だから、消えて良かったと思うぞ。

 なにをそんなに焦ることがあるんだ?

 すると、なにやらムニュっとした感触が。

 リズが俺に抱き着いてきたからだ。

 その綺麗な紫眼が滲んでいる。

 理由はわからんが、彼女にとってなにか嫌な事だったのだろう。

 「良くない……良くないんです!」

 その小さな顔を俺の胸に埋めながら、叫ぶリズ。


 「印は消えてバートスとの縛りはなくなりました。
 そして、バートスが魔界から追放された誤解も解けました。
 なにより、同僚の方ともとても楽しそうですし―――

 ―――バートスが魔界に帰らない理由がなくなりました……」


 帰る? 


 ああ、もしかしてそのことで彼女は。

 「なあリズ」

 「帰っちゃうんですね……」

 「魔界には帰らんよ」

 「でも、もう元の仕事に戻れるんじゃないですか?」

 「俺の仕事はすでに決まっているからな」

 「それって……」

 不安と心配が混ざったような顔を向ける少女に、俺はハッキリと言う。


 「ああ。俺はリズの従者だよ」


 「ほ、本当ですか? ウソは許しませんよ!」

 「ああ、なにがあろうとも」

 「ずっとですか? 急にどっかいくとか嫌ですよ!」

 「もちろんだ」


 俺がそう言うと、リズは俺の腕の中で俯いて黙ってしまった。


 「あ~~リズったら、また抜け駆けしてる~~」
 「われもう食べれないぃんんん~」

 カルラとエレナか。

 2人はリズをつついて、文句を垂れた。
 だが、それはいつもの彼女たちの気遣いのようなものだろう。
 リズの様子がおかしいから心配しているのだと思う。

 そこへガバっと顔をあげる聖女リズ。


 「バートス、これからも一緒に旅をしてくれますか?」
 「ああ、ずっと一緒だ。リズが嫌でなければな」

 その言葉を聞いてようやく安心したのか、すこし口元を緩めて微笑む少女。
 もういつものリズに戻っていた。

 「フフ、頼りにしてますよバートス」


 「おう、おっさんに任せてくれ」



―――――――――――――――――――――――――――
 これにて第一部、終了とさせて頂きます。
 読んで頂き、ありがとうございました。