魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?

 王城の一室で密かに火蓋が切られた、たこ焼きの戦い。

 いよいよラスボスである第三王女ファレーヌの登場です。

 調理なのにドレス姿。だけど汚れが一つもない……
 さらには予習したという見事なコロコロ技術。

 「バートス! ちょうどいい具合に焼けました!」

 「おお~~すっごい綺麗だな! ファレーヌは器用なんだな」

 えへへ~と可愛らしく舌を出すファレーヌ。
 フッ……予習したとはいえ、しょせんはお姫さまのにわか仕込み。

 形がある程度整っている程度でしょ……!?


 ふわっ!! めちゃくちゃ綺麗です……


 ファレーヌここまで料理なんかできましたっけ? そもそも王女が料理とかしないはず。
 本当に今日のためだけに練習したんですね……。

 「うむ、定番のタコはうまい! しかしなんだか生地が少し変わっているな」
 「フフ、バートス。それはパスタを生地に練り込んだのです」

 「パスタってあの長い麺か?」
 「そうですよ。パスタは縁結びの食材でもあるらしいんです。いま王都では若い男女が同じパスタを食べるのが流行っているらしいですし」
 「へぇ、ファレーヌは色々知っているんだな。王城から自由に出れないだろうに」
 「フフ、バートスのためならなんでも出来ますから」


 むぅ……なんかすっごい楽しそうです。

 2人だけの空間が出来上がって……なんかイヤです……。

 なんでしょう。こんなんこと考えるべきではないのに。
 でも勝手に負の感情がわいてきちゃって……どうしようもできない。


 「お、リズも出来上がったようだな」


 やっと私の番です。

 さあ~今までのみんなの技はすでに習得しました!

 とりあえずバートスの顔を掴んで固定します。

 「んきゃっ!」

 なんか変な声が漏れた気もしますが、気にしている場合じゃないです。

 こ、今度こそ……「あ~~ん」を……
 か、顔は直視できないけど。


 「えいっ!」


 ―――ズボ! 「んぐっ!」

 やった! できました! 

 でもすっごい恥ずかしいから、少し「あ~~ん」速度をあげます!


 ズボ! ズボ! ズボ! 

 「んぐっ!」 「ぐふはっ!」 「………」

 ふぅ~~無事に「あ~ん」完了しました。案外簡単なのですね。


 「リズ~~!? なにやってんの!?」
 「ふわぁあ~~バートス泡ふいてるのじゃ!」

 ―――ええぇ!

 ―――そんな! 


 泡を吹くぐらい、美味しくなかったのですか!?



 ◇◇◇



 ハァ……

 やってしまいました。
 「あ~ん」失敗です……。

 というか何もかも空回りしている気がします……。

 カルラとエレナはバートスと楽しそうにたこ焼きを焼いています。

 バートスが私を手招きしてますが……
 色々とぶち壊してしまった私はとてもそんな気分にはなれません。

 「フフ、まったくあなたは……」

 そう言って、私の横に腰かけてきたのはファレーヌです。

 「どうしたのリズ? みなさんと楽しまないの?」
 「だって……私は……」

 「今日はいつものリズロッテじゃないのね」

 そう言われて、なにも言い返せない。

 だって、目の前にいる王女が原因なんだもの。

 ここ数日ずっと自分らしからぬことをしている。
 国王陛下の前なのに、バートスと手を繋ぐとか、私もバートスに抱かれたことあるなんて言うとか、あり得ないことをしてしまった……

 思い返しても恥ずかしい。

 でも、あの時はそうしないといけないって、勝手に動いてしまった。
 それもこれも、全部……

 「ファレーヌのせいですよ……」

 あ、言ってしまいました。

 別に彼女が、なにか悪いことをしているわけでもないのに。

 「リズロッテ。わたくし初めて殿方にときめきました」

 「え……?」

 「その方は、あなたも良く分かっている人です」

 どうしたのですか? ファレーヌ?

 「わたくしは王族です。だから結婚相手も自分では決められないでしょう。恋愛もです。
 それでも―――ときめいちゃったのです」

 ファレーヌは自身の綺麗な髪を指でクルクルと巻きながらも言葉を紡ぐ。

 「もう自分でも止められなくなりました」

 フフっと微笑むファレーヌ。

 「はたから見ていて滑稽だったでしょう。リズの知る第三王女が普段の自分を捨てて、テンション上がっちゃって……」

 たしかに、ファレーヌは少し無理をしていたようにも見える。

 「でもねリズ、すっごく楽しいですよ」

 「楽しい……ですか」

 そういえば今日勝手にウジウジして楽しんでいないのは私だ。

 ファレーヌは自分の出来ることを懸命にやっていただけです。
 カルラやエレナも同じ。

 何でしょう……嫉妬しまくっていた自分が嫌になってきました。

 恥ずかしい……

 「ファレーヌは……もしバートスが求めれば……その、応じますか?」

 うわ、なに聞いてんの。私。
 今日はもう口を開かない方が良いのに。

 「フフ、もちろんそうしたいですけど……」
 「けど……?」

 「あの人が見ているのは別の人ですからね」

 そう言って、私の上を見上げるファレーヌ。

 あ、バートス。

 「リズ、たこ焼きありがとうな。美味しかったぞ」

 満面の笑みを私に見せてくれたバートス。

 あんな無理やりズボズボ突っ込んだのに、なんでその笑顔が出来るのですか。

 ふたたびカルラに引っ張られていく彼を見て、少し心が安らいだ。

 「ほらね。リズはたぶん特別なんでしょうね」
 「ファレーヌ……」

 「ですがわたくしも戦わずして退く気はありませんよ。ましてやあれだけ時間があってなんの進展もしてないなんて。腑抜けにもほどがあります」
 「そうですね……でも」

 でも、こればかりは親友のファレーヌでも負けるわけにはいかないですから。

 「そんなの当たり前だよ~~てかあたし聖女にも王女にも負けないから~~」

 カルラが会話に割って入ってきた。

 「フフ、これは負けられないですね」


 「「「フフフ」」」


 そして―――

 美少女たちが不敵な笑みを浮かべていた頃、
 魔界ではとんでもない事件が起きようとしていた。