追放された転生第7王子、マニアックなスキル【ポーション生成・合成】でぼっちスローライフ満喫……のはずが、作ったポーションが凄すぎて美少女依存者が続出してしまい俺を離してくれない

 「いくぞ王子ぃいい!
 ―――――――――ぬぉおおおおお!!」

 隊長の叫びと同時に、拳が唸りを上げて空気を裂く。

 俺の【戦闘ポーション(限界突破身体能力アップ)(リミットブレイクパワーブースト)】も、隊長のバトルエリクサーも互いに身体能力アップに特化したポーションだ。

 己の生命力を身体強化に転換しているという点では、同じ。

 隊長の拳……

 もはやあとさき考えずに、全生命力を拳にのせてきている。

 最後の一撃という事が嫌でもわかる。


 だが―――

 俺のポーションも負けるわけにはいかん。


 「「これで終わりだァァアアア!!」」


 二つの拳が、空間を揺るがす音を残して激突する。

 拳と拳がぶつかり合った瞬間、とてつもない衝撃が俺たちを包む。
 衝撃波が大気を引き裂き、木々は幹ごとねじ曲がり、地表がえぐれ、天高く巻き上がる土煙。

 俺と隊長はそのまま、弾かれるように反対方向へと吹っ飛んだ。

 「―――ぐっ……!」

 地面に叩きつけられたであろう感覚。

 視界がぐにゃりと揺れ、先ほど起こった轟音から音が聞こえなくなった。

 音の消え去った世界に、時間が止まったような錯覚が広がる。

 しばらくして……

 砂煙の中から、俺はよろけながら立ち上がった。

 「…………っ、ハァ、ハァ……」

 拳をダランと下ろし、足を引きずるようにして一歩また一歩と前に進む。
 歩を進めるうちに、吹き上がった土煙が薄くなっていく。

 呼吸を整えながら、俺はゆっくりと足を止めると。

 俺の視線の先には、地面に倒れて動かない男がいた。


 「……終わったな、隊長さんよ」


 隊長は仰向けに倒れており、拳を握ったまま動かず、わずかな呼吸音のみが聞こえてきた。

 「たく、あんたの我儘に付き合わされてボロボロだぜ」

 「……だ」

 僅かに開いた口から、漏れる隊長の声。

 「……完敗だ」

 「そうかい、なら俺は帰るぜ。おっと……まあ大丈夫だとは思うが、もうラーナにいらんことするなよ」

 俺は踵を返して、隊長に背を向けた。

 「……フ……フフ……」

 背後から聞こえる弱々しい声。

 「安心しろ王子、バトルエリクサーを使った以上ただでは済まん……もはや思い残すことなどなにもない……」


 ふぅ……


 まあ、そうなるわな。

 バトルエリクサーはとてつもないバフ効果を与えるが、その引き換えに自身の生命力を全て燃やし尽くす。
 太古の神が、神々の身体スペックを元にでも設計したんだろう。

 使うのは人間なんだぜ。

 やりすぎなんだよな。

 俺の戦闘ポーションも後々手痛いしっぺ返しはくるが、すべて燃やし尽くすなんてことない。
 その前に活動不能になるからな。

 このおっさん(隊長)もバトルエリクサーを飲んだ時から……いや、その前から自分の結末はわかっていたのかもしれない。

 俺は振り向いて、再び隊長の元へ進む。

 ポーチに手を突っ込み。

 1本のポーションを取り出し、隊長の前に置いた。

 「なんだこれは?」

 「回復ポーションだよ」

 俺が隊長の前に置いたのは、【ポーション(超生命力回復)(メガライフパワーチャージ)】だ。
 エトラシアの妹ユリカを瀕死の状態から救ったポーション。
 レア素材がエトラシアの鞘から生えてたから、作っておいたんだが……まさかこんなところで使うとはな。

 「王子……貴様の特殊ポーションか……」
 「あとは知らん。飲むかどうかはお前に任せる」

 「もはやこの世に未練はない……身体も動かんし、飲む力も残っておらんわ」

 「だから勝手にしろって。まあ、そう簡単には逝かせてくれそうにもないけどな」

 「……?」

 無言のまま眉間にうっすらと皺を寄せた隊長に背を向け、ゆっくりとその場を離れる。
 一歩進むごとに身体にズキリと痛みが走る。

 クソっ……俺もたいがいボロボロだったことを忘れてたよ。

 「おい、行くんなら早くしろよ」

 少し進んだ先で、俺がボソリと呟くと……

 「ひゃん!」というマヌケな声とともに、女が木陰から尻もちをついて出てきた。

 出た来た女は俺に一礼すると、隊長の元へ一目散に走って行く。

 「……た、タイナー……な、なぜこんなところに……」
 「え、えと。とりあえず王子のポーション飲ませます!」
 「いや……私は……」
 「隊長の意見は聞きません! 無理やり飲ませますからっ! えいっ!!」

 さらに周辺から3人の人影が現れておっさん(隊長)の元へ駆けていく。どれも見たことのある顔だな。
 おまえら解散したんじゃなかったのかよ。

 やはりそう簡単には逝かせてくれないようだ。

 「ふぅ~~」

 俺は一息つくと、再び前を向いた。


 さてと、帰るか。


 ―――ブルンっ!

 ゆっくりと歩いていると、なんか木陰から飛び出してきた。
 ブルンと揺らしたやつが。

 「クレイさん、かっこよすぎですぅうう!」
 「うわぶっ!!」

 ボロボロの身体をブルンで挟んできた聖女。

 ラーナか。

 「く、クレイ殿! うわっ!」

 続いて出てきたのはエトラシアか。まあその場で転倒しているが。

 「ご主人様! ボロボロです~~」
 「クレイ様~無茶しすぎです!」
 「キャンキャン!」
 「お兄様ぁあああ~~♡」
 「ん……クレイおにい」
 「……スウスウ」
 「クレイさま、タオルをお持ちしました」

 こっちにもいっぱい隠れてたのかよ……

 「クレイ殿が人の接近に気付かないとはなぁ」

 黒服たちまではわかっていたが、ラーナたちまではわからんかった。
 エトラシアの言う通り俺も相当消耗しているんだな。

 「クレイさん……」

 そっと俺の背中に回される細い腕。次第に力を帯びて、きゅっと強くなっていく。

 「あんまり無茶しちゃダメですよ」

 「……そうだな」

 よくよく考えてみれば、前世では誰も俺のことなど気にしていなかった。
 まあ、気にしてくれる人がいるってのは……

 いいもんだな。

 「さて、屋敷に戻るか」
 「は~い、クレイさん。ゆっくりやすまないとですよね~~」

 「え? ポーション作るんだけど」


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いつも読んで頂きありがとうございます。

ここでいったん第一部完結とさせて頂きます。
今まで長きにわたりご愛読頂き、本当にありがとうございました。

これからも面白い作品を投稿できるように頑張りますので、
引き続き応援よろしくお願いします!