「ねぇ、私を殺してください」
彼は俺に向かってそう言った。息が詰まる。鼓動が速くなり、汗がダラダラと流れていく。震える手で彼の頬に触れる。彼は不安そうに俺を見上げる。
「私にせめてもの慈悲をくれませんか?」
小さい声で絞り出すように言葉を吐き出した後彼の目には不安と恐怖がうつる。足や手はカタカタ小刻みに震えて顔色が白から青白くなっていく。時間は無い。早く彼の望み通りにしなければと思っているのに俺の手は情け無いぐらい力が入らない。大切だからできるだけ願い通りにしてあげたい。そう意を決して手を彼の首に移動する。ふぅと息を吐く、彼は不安一杯の顔をしている。
「大丈夫大丈夫、、心配しないで」
自分に言い聞かせるように呟く。手に力を込めて喉仏を押し込む。ヒューヒューと彼の喉から音が鳴る。もっと力を込めなければ。彼を苦しめないために体重も乗せながら締めていく。
ゴキゴキと嫌な音が部屋に響く。これ以上やりたく無い。そう思う気持ちを必死で押し込む。彼の顔が水滴で濡れる。彼は今まで見せたこと無い程の笑顔をして
「あなた、、は、、、」
それ以上彼から言葉が紡がれることは無かった。彼の首から手を離す。彼の首には痛々しい跡が残っている。そっと彼のまぶたを下に下ろす。目を閉じて笑う彼をゆっくり抱きかかえ、ソファに座らせる。自分も座って横を見る。まるで寝落ちしている様だ。彼の太ももに頭を乗せて胸に耳を近付ける。
「何も聞こえない」
部屋には哀しい無音が響く。虚しさを紛らわすため、彼との記憶を手繰り寄せる。俺達は2人いつも一緒だった。
近寄りがたい印象の彼は一歩近づいてしまえば、全てを受け入れ見せてくれる。あの時楽しかったな、沢山の好きを話したななんて思い出を振り返る。
何でこうなったんだろう。2人はピッタリ合っていたはずだった。俺があゝ言えば彼はこう言う。一番欲しい言葉を一番欲しい時にくれる。それが当たり前に続くと思っていたのに。
2人ぴったりズレていたらしい。
「あーあ、助けてくれよ」
聞こえないと分かっているのに手を伸ばしてしまう。いつから間違ったのだろうか?話しかけたあの時だろうか?
俺に出会ってしまったからこんな結末を迎えたのなら、会わなければ良かった、、でも出会わなかった人生を考えるとなんだか物足りない。やっぱりこの出会いは必要なものだった。
過去から現在に意識を戻す。冷たくなってしまった太もも。
沢山食べる割に薄い腰。だんだん変な気分になってきた。でも勝手に身体を使ってしまうのは頂けない。あぁいなくなって気づいたこの気持ち。手にかけてしまった秘密。隠して生きるには大きすぎる。
そっちに行っていいだろうか。ついて行っても怒られないだらろうか。そうだ、死ぬ間際彼は俺のことを呼んだ。きっとついてきてくれる?と聞こうとしたんだ。ならば早く彼のところに行かなければ、そう思うより先に体が動く。ガチャガチャと棚から目当てのものを探す
「あっ!あったあった。」
咳止め薬を見つける。薬を容器から全部出して口に入れる。ボリボリと噛んで食べる。口の中全体に張り付いて苦くて仕方がない。側に用意していたいちご牛乳で流し込む。せっかくのおいしいものが台無しになったなと思いながらも彼を抱えてベッドに寝かせる。自分も隣に寝転ぶ。そのまましばらくじっとしていると、手足が震えだす。全身から温度が消えていく感覚が不快だ。でも、そんな不快感も隣を見ると彼がいる嬉しさで消し飛んでしまう。
きっと今俺は世界一幸せな死に方をしているに違いない。
「来世で又会おう」
君に伝われば良い。2人だけが分かればいい。
声には出せぬ想いを身体に隠しこの世界から繋がりを絶った
彼は俺に向かってそう言った。息が詰まる。鼓動が速くなり、汗がダラダラと流れていく。震える手で彼の頬に触れる。彼は不安そうに俺を見上げる。
「私にせめてもの慈悲をくれませんか?」
小さい声で絞り出すように言葉を吐き出した後彼の目には不安と恐怖がうつる。足や手はカタカタ小刻みに震えて顔色が白から青白くなっていく。時間は無い。早く彼の望み通りにしなければと思っているのに俺の手は情け無いぐらい力が入らない。大切だからできるだけ願い通りにしてあげたい。そう意を決して手を彼の首に移動する。ふぅと息を吐く、彼は不安一杯の顔をしている。
「大丈夫大丈夫、、心配しないで」
自分に言い聞かせるように呟く。手に力を込めて喉仏を押し込む。ヒューヒューと彼の喉から音が鳴る。もっと力を込めなければ。彼を苦しめないために体重も乗せながら締めていく。
ゴキゴキと嫌な音が部屋に響く。これ以上やりたく無い。そう思う気持ちを必死で押し込む。彼の顔が水滴で濡れる。彼は今まで見せたこと無い程の笑顔をして
「あなた、、は、、、」
それ以上彼から言葉が紡がれることは無かった。彼の首から手を離す。彼の首には痛々しい跡が残っている。そっと彼のまぶたを下に下ろす。目を閉じて笑う彼をゆっくり抱きかかえ、ソファに座らせる。自分も座って横を見る。まるで寝落ちしている様だ。彼の太ももに頭を乗せて胸に耳を近付ける。
「何も聞こえない」
部屋には哀しい無音が響く。虚しさを紛らわすため、彼との記憶を手繰り寄せる。俺達は2人いつも一緒だった。
近寄りがたい印象の彼は一歩近づいてしまえば、全てを受け入れ見せてくれる。あの時楽しかったな、沢山の好きを話したななんて思い出を振り返る。
何でこうなったんだろう。2人はピッタリ合っていたはずだった。俺があゝ言えば彼はこう言う。一番欲しい言葉を一番欲しい時にくれる。それが当たり前に続くと思っていたのに。
2人ぴったりズレていたらしい。
「あーあ、助けてくれよ」
聞こえないと分かっているのに手を伸ばしてしまう。いつから間違ったのだろうか?話しかけたあの時だろうか?
俺に出会ってしまったからこんな結末を迎えたのなら、会わなければ良かった、、でも出会わなかった人生を考えるとなんだか物足りない。やっぱりこの出会いは必要なものだった。
過去から現在に意識を戻す。冷たくなってしまった太もも。
沢山食べる割に薄い腰。だんだん変な気分になってきた。でも勝手に身体を使ってしまうのは頂けない。あぁいなくなって気づいたこの気持ち。手にかけてしまった秘密。隠して生きるには大きすぎる。
そっちに行っていいだろうか。ついて行っても怒られないだらろうか。そうだ、死ぬ間際彼は俺のことを呼んだ。きっとついてきてくれる?と聞こうとしたんだ。ならば早く彼のところに行かなければ、そう思うより先に体が動く。ガチャガチャと棚から目当てのものを探す
「あっ!あったあった。」
咳止め薬を見つける。薬を容器から全部出して口に入れる。ボリボリと噛んで食べる。口の中全体に張り付いて苦くて仕方がない。側に用意していたいちご牛乳で流し込む。せっかくのおいしいものが台無しになったなと思いながらも彼を抱えてベッドに寝かせる。自分も隣に寝転ぶ。そのまましばらくじっとしていると、手足が震えだす。全身から温度が消えていく感覚が不快だ。でも、そんな不快感も隣を見ると彼がいる嬉しさで消し飛んでしまう。
きっと今俺は世界一幸せな死に方をしているに違いない。
「来世で又会おう」
君に伝われば良い。2人だけが分かればいい。
声には出せぬ想いを身体に隠しこの世界から繋がりを絶った



