トタトタトタ……。

「あのこが心配なの?」
アンズさんとが微笑んでくれる。
寝室までは猫耳のお姉さんも一緒についてきてくれた。
「……はい」
「大丈夫よ。あれでも隔り世いちですもの」
それは……本鬼(ほんにん)も言っていたけれど。本当に大丈夫だろうか。相手はあの【金雀児】である。
鬼は大丈夫だろうか……?

「私の義弟だもの。大丈夫よ」
そう言えば、さっきも……。

「その、義弟、なんですか?」
「そうよ。元々、私はあのこの師匠に仕えていたの。でも色々と手のかかるコだったから、私が姉代わりになって、鍛えてあげていたの」
そう言う、関係だったんだ。しかし、師匠って、武道とかの師匠だろうか?隔り世にもそう言うのはあるだろうし、鬼は強いから、武道やなんやらも強いはずである。

「そうそう。あと、お師匠さまの影響かしら。ねこ大好きになったわよねぇ」
そう猫耳のお姉さんがくすくすと笑う。
ねこ好きは……お師匠さまの影響…、?お師匠しまもねこが好きなのだろうか。

うん、でも確かにねこは大好きだよね。私をねこでつってくるほどである。

「ねこいっぱいいるのよ、この屋敷」
と、猫耳のお姉さんがくすりと笑い、指差した方向を見れば……。


「なーん」
「にゃあん」
「みゃぁお」
はうあぁぁぁっ!!?そこら辺に、ねこが……!しかもしっぽが2本に分かれているコが……!
ねこたくさん、いるううぅぅぅ……!

顔を前足でこしこししたり、寛いだり、するりと壁に取り付けられたキャットタワーでジャンプして遊んだり……!!

そもそもこの屋敷、ねこが楽しめるように壁にキャットタワー常備!ねこが寛ぐためのベッドとかも所々にあるし、襖の傍らの壁にはもれなくキャットドア付き~~~~っ!

あぅあぁぁっ!!まさにねこ!ねこのためのねこ屋敷いぃぃっ!

「猫又……」
かわゆす。

「そうねぇ。猫又もいっぱい集まってるわねぇ。ほかの猫妖怪も多いわ~。私もね」
そう言えばお姉さんのしっぽは1本である。よく見ればねこたちの中にも、しっぽが1本のコがいる。

「でも全員、妖怪よ~。私みたいに化けられるコもいるの。私の名前はふゆなと言うの。よろしくねぇ」
「ふゆなさん」

「そうよ~。そうそう、さっきはうちのコたち、かわいがってくれてありがとうねぇ」
うちのコたち……?そう言えば、あの女の子のちびねこちゃんは、ふゆなさんと毛並みの色が同じかも……!

「えっと……っ、ふゆなさんの……っ!?」

「うん、うちのコたち。今日はみんな……板前の夫も猫妖怪なのだけれど、宴のために出払ってるから、主さまがお部屋に来ていいと言ってくださってねぇ。ほら」
すとん、とふゆなさんが襖を開ければ。

「すぅ、すぅにゃぁ……」
「にゃぁ、ぁん……おしゃかにゃ……」
大きなお布団の上に天使がふたりいぃぃっ!!
しかも……おしゃかにゃ……かわいい……。やっぱりおしゃかにゃ好きなのだろうか……!!

「女の子がみふゆで、男の子がまふゆよ~。双子なの~」
白い髪のコがみふゆちゃんで、茶髪なコがまふゆくん……っ!!
しかも同い年くらいかなって思っていたら、双子ちゃん~~~~っ!萌える。萌えすぎる、かわいすぎるよ双子のちびねこちゃん。

早速お布団を整え直してくれるふゆなさん。さらには傍らにあったブランケットをさっと広げれば、かわいい双子ちゃんに掛けてあげていた。
……そのブランケットもかわいいねこ柄っ!!

「キャットドアからねこや、ほかにもちびもふ妖怪が入ってくると思うから、一緒にお布団でもふもふしてねぇ」
も……もっともふもふが来るのか……っ!?何その最高なお布団は……っ!

あれ、でもちょっと待って……。

「あの、主さまの部屋って……」
「結婚したんですもの……!」
と、ニコニコしながら告げるふゆなさんに、今更ながら自覚する。私はあの鬼の、花嫁になったのだと。

「一緒に、寝るってこと、ですよね」
このでかい布団、しかも一枚。確実にふたりで寝ても、お釣りが来る。

「そうよ。でも大丈夫!ちびちゃんたちが目を光らせていれば、変な気なんて起こさないでしょう?」
アンズさんの言う通り……ちびちゃんたちは、最大の防波堤……!

「アリスちゃんは、ここでゆっくりしていてねぇ~。宴は何時に終わるか分からないし、先に寝ていても全然構わないから~」
ふゆなさんに優しく微笑まれて、そっとお布団の端に腰をおろして頷いた。

「そうそう、寝不足になったらあのこ発狂するし」
「あら、分かるぅ~~」
アンズさんの言葉に頷くふゆなさん。そう……なのかな?あの鬼は、本当に私のことを……?

そうして手を振って部屋を後にするふゆなさんとアンズさんに手を振る。ふたりもこの後は宴の手伝いにいくらしい。

ちびねこちゃんたちがすやすやと眠る中、私は腰を下ろしたふかふかのお布団をぽふぽふしてみた。ちゃんとシーツもある。しかも触り心地が最高である。

しかも掛け布団カバーはねこ柄。ふたつ並んだ枕のカバーもねこ!

その他にも、部屋に置かれたふかふかの和室用のローソファーの上にはねこクッションやねこのぬいぐるみまである。

ねこのぬいぐるみ……すらりとしたねこちゃんから、長毛種風のねこちゃん、三毛猫ちゃん、さらにはちょっぴり小さめのこねこちゃんまでいて、かわいすぎる……!

思わずとたとたと近付き、ねこちゃんを順番に抱っこしてなでなでする。

「ふわふわ……もふもふ、ふかふかぁ」
かわいすぎるだろ!!特にこねこちゃんぬいぐるみはふわっふわで、思わず3匹一緒に抱き締めてすりすりしてしまった。

何だか懐かしい匂いがするのは、気のせいだろうか。

思う存分すりすりを楽しめば、次はとたとたと座卓スペースに足を踏み入れる。

お布団の傍らの座卓スペースの座椅子も……背もたれが、ねこ!!座布団はふかふかで、角の部分にあしらわれたねこのにくきうマークがかわいすぎる……!完全なるねこ柄にしなかったのは……私になら、分かる。
ねこをお尻の下に敷くなんて……無理……!!

あの鬼は、やはり分かっている。そして座布団についた、ねこ毛!見ただけで幸せ~~~~っ!

この座布団で寛いだねこちゃん。また、来てくれるといいなぁ。

再びお布団の元へ戻り、ぽふんと横になれば。みふゆちゃんとまふゆちゃんがねこ柄ブランケットを手で手繰り寄せて……

「にゃぁ……んにゃぁ……」
「ままぁ……にゃぁ……」
鼻元ですんすんしながらすやすや。ひゃあぁぁぁぁんっ!!かわいすぎるよおぉぉっ!!!

……やっぱり、天使だなぁ。
うとうとしながら幸せ風景を眺めていれば。

「にゃぁん」
「なーん」
「まーちゃん、みーちゃんいたぁ!」
「わふっ、わふっ!」
ねこドアから入ってきたらしい、猫又やコウモリっぽい耳と襟もふ、翼の生えた男の子、狼耳しっぽの女の子たちが入ってきて、身体にすりすりしてくれる。

はぅあぁぁぁぁっ!!めくるめく……めくるめくもふもふの、大共演~~~~っ!?

「はなよめしゃん」
「いーこ、いーこ!」
しかも何故かちびちゃんたちになでなでされている。

「うにゅぅ、ありすおねーちゃんだにゃぁ……」
「にゃあぁ……いっしょにゃぁ……」
みんながやって来たことで、寝ぼけながらも私がいることに気が付いたまふゆくんと、みふゆちゃんが仲良くブランケットを持って側ですりすりしてくれる。

「みんなでもふもふ」
「わふっ!」
コウモリちびっ子くんと狼耳ちびっ子ちゃんとも仲良くすうすうとみんなで天使の寝息をたてる。

あぁ……かわいい……!

「なぁん」
ねこたちにも同意されているそうで。
なんだか幸せ心地で眠りについた。