【第6回スターツ出版文庫大賞 / 結果講評】

この度は、「第6回スターツ出版文庫大賞」の開催に際し、多数の作品をエントリーいただき、誠にありがとうございました。ご応募くださった作家の皆様、そして、作品をお読みくださった読者の皆様に、心より感謝申し上げます。

さて、第6回となる今回は、①青春恋愛 ②恋愛ファンタジー ③フリーテーマの3部門に分けて募集いたしました。3部門のテーマごとに、異なる読者層に向けて、想いの詰まった魅力的な作品が集まりました。

私たち審査員は、文章力や物語の構成などのクオリティに関する部分とともに、今回は、いかに冒頭や設定で読者の心を掴み、物語に引き込むことが出来ているか、共感できる主人公像になっているか、などを審査ポイントに置き、厳正なる審査をさせていただきました。

最終選考に残った作品は、上記の審査ポイントに該当する良作揃いで、甲乙つけがたい審査となりましたが、残念ながら、その中で突出したパワーのある作品が見られず、大賞作は該当なしとなりました。その結果、優秀賞3作の選出となり、受賞作品への講評は以下の通りとなります。

優秀賞『君と僕の残り、363日』まは。 /著

人の余命を見ることができる主人公が出会ったのは、なぜか余命が極端に減っていくヒロイン。彼女もまた余命にまつわる特殊能力を秘めています。本作は、ふたりを繋ぐ不思議な能力の設定が大きなインパクトとして心を掴み、オリジナリティを生んでいます。そして「死ぬ運命は変えられない」と思っていた主人公が、自分を犠牲にしても「運命を変えよう」とするヒロインと出会い、成長していく姿に心動かされました。ヒロインの行動の理由づけや、タイトルの意味をラストで強調できると、さらに完成度の高い作品として大賞に近づくと思います。

優秀賞『眠り姫は宇宙ロケットの夢を見る』浅井ハル / 著

周囲と関わりを持とうとしない主人公と、クラスで人気者の美少女という対照的なふたりの物語。ヒロインからの突然のあるお願いをきっかけに交流が始まる王道の展開でありながらも、主人公の隠された設定が、ラストの感動に繋がる仕掛けとして上手く構成されていました。特に、時を経たエピローグ、ヒロインからの手紙など、ラストが印象に残る作品で、第5回の本コンテストで特別賞を受賞されてからの進化が感じられました。あとは、前半のふたりが心通わすエピソードがやや弱いので、ふたりの絆が深まる過程を加筆すると、よりラストの感動が強まるのではと思います。



優秀賞『青い風、君と駆ける』水瀬さら / 著

中学時代、バスの事故で陸上部の仲間と親友を失ってしまった主人公。自分だけ生き残ってしまった罪悪感に苛まれ苦しむ主人公の心情に、どの作品よりも感情移入できました。楽しかった日々の回想、現実から目を背け、異様に明るく振る舞う主人公の姿が切なく涙を誘います。また、もうひとりの生き残りである幼馴染のヒーローと再会し、一歩踏み出すまでの再生が繊細に描かれていました。あとは、ふたりの関係が変化する大きなきっかけを作るなど、後半の展開に意外性が出るとさらに心に残る作品になるでしょう。

以上、受賞者の方々、おめでとうございます！

ノベマ！では、新たなジャンルの可能性を開拓すべく、これからも様々なコンテストを予定しております。

現在は、「キャラクター短編小説コンテスト」が開催されております。

毎月掲げられるテーマに沿って短編を書いていただく内容となっております。

これからのスターツ出版文庫を担う、あなたにしか書けない物語をお待ちしております。