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帰宅したその晩のことだ。
夕食後に名前の相談なんかをしつつお茶をする私たち夫婦。
お産への焦りはあるものの、名前についてはどうしても決めかねている。
私としては、顔を見て決めたいというのもあるし……。
部長は早く決めたいようだけれど。
「決めたら、刺繍してやればいいだろ」
部長がふと言った。
「刺繍?」
「おまえ、スタイ作ってただろ。アレに名前を刺繍すればいいんじゃないか?」
私はぎょっとした。
なんでそれを?
ゴールデンウィークに、部長の留守を盗んで作ったあのスタイ。
入院バッグの底に隠しておいたはずなのに!
私の驚きを余所に部長はニコニコしている。
「この前の病院騒ぎな。あの時、バッグの中に見えたんだ。……まあ、なかなか味のある出来だったが、ポンには似合いそうだな。名前を決めたら、お産までの間に刺繍してやればいいと……」
私は部長の言葉を聞き終える前に立ち上がった。
なんとも言えない気持ちだった。
恥ずかしいのか、悔しいのか。
昼間、枝先生と話して落ち着いた心がまたざわざわと揺れ出すのを感じる。
帰宅したその晩のことだ。
夕食後に名前の相談なんかをしつつお茶をする私たち夫婦。
お産への焦りはあるものの、名前についてはどうしても決めかねている。
私としては、顔を見て決めたいというのもあるし……。
部長は早く決めたいようだけれど。
「決めたら、刺繍してやればいいだろ」
部長がふと言った。
「刺繍?」
「おまえ、スタイ作ってただろ。アレに名前を刺繍すればいいんじゃないか?」
私はぎょっとした。
なんでそれを?
ゴールデンウィークに、部長の留守を盗んで作ったあのスタイ。
入院バッグの底に隠しておいたはずなのに!
私の驚きを余所に部長はニコニコしている。
「この前の病院騒ぎな。あの時、バッグの中に見えたんだ。……まあ、なかなか味のある出来だったが、ポンには似合いそうだな。名前を決めたら、お産までの間に刺繍してやればいいと……」
私は部長の言葉を聞き終える前に立ち上がった。
なんとも言えない気持ちだった。
恥ずかしいのか、悔しいのか。
昼間、枝先生と話して落ち着いた心がまたざわざわと揺れ出すのを感じる。