部長の愛車が東名高速を走る。


土曜日の朝、私たちは混雑を避け早めに出発した。

西の空に雲が広がるけれど、天気はさほど悪くはない。
崩れるとしたら夜以降だと、昨日の天気予報では言っていた。


コンビニのドリップコーヒーを飲みながら、部長は運転している。


口数は少なく、私は気詰まりではなかったけれど、緊張していた。

部長のお母さんに、私たちは会いに行くのだ。


お土産は部長の指示で叔父さん宅の分しか用意していない。
お母さんの分はいらないと言うのだ。

もしかすると、病状は深刻かもしれない。
部長は「俺の顔もわからない」と言っていた。

でも、私はこっそりスカーフを用意している。
もしもの時は、病院の看護師さんに言付けて使ってもらってもいいし。