「佐波ちゃんがお母さんになるなんて、嬉しいね」


湯船の中、祖母はしわしわの手で私のお腹を撫でた。
昔、祖母とよくお風呂に入った。身体を洗ってもらったことを思い出す。


「おばあちゃんの曾孫だよ。たくさん、抱っこしてあげてね」


「あらあら、だめだよ。おばあちゃんもう体力無くなっちゃったんだ。たくさん抱っこできないよ。
……今から腕立て伏せしたら、産まれるまでに筋肉が戻るかねぇ」


「あら、いいんじゃない?母さん。あと、3ヶ月くらいあるから私もやろうかしら?腕立て伏せ」


母が真顔で相槌を打つ。


「ヒンズースクワットも長寿にいいらしいよ。毎日100回くらいやる芸能人がいるんだから」


「やだ、血圧上がっちゃいそうよ、母さん。でも、孫育てには体力がいるものね。やっぱり必要?」


母の天然は祖母ゆずりに違いない……。

私は生温い視線を隣の母娘に向け、お腹を撫でた。


お風呂が気持ちいいのか、ポンちゃんは伸びやかに動いている。
この半月でいっそう胎動が強くなった。