次の瞬間、部長が私の手を取り、身体を引き寄せた。

勢い、私は部長の腕の中に飛び込むかたちになる。
部長の腕が私を包み、抱き締めた。


「ちょっ……部長っ」


「いーから、黙ってろ」


時間にしたら1分くらい。
私たちは抱き合った状態でいた。

心臓がバクバクいう。
血流がいいせいか、パパの気配を感じてか、ポンちゃんがぽくぽくとお腹を蹴る。

身体を離すと、部長は言った。


「これで我慢する」


「どういう……ことですか?」


「佐波、結婚しようって話した時、俺が言った言葉を覚えてるか?」


「はぁ……」


どんなこと言ったっけ。
責任を取ろうって話したのは覚えてるんだけど。

部長が目をそらした。
もしかして、恥ずかしい?


「俺はあの夜のことは全部覚えてるって言っただろう」