丸友不動産はグループ会社にしか広告を任せない。
そこに飛び込んで、話をもぎとってきたのが、一色部長本人だった。


最初は小さな看板。

丸友側の好評で次の仕事がくる。
それを繰り返している内に物件丸ごとの広告依頼がきた。


他の仕事をすべて夢子ちゃんに回し、私は丸友の仕事にかかりきりになった。
一色部長もそうだった。

家に帰れず、近所の漫画喫茶でシャワーを浴びて仮眠をとる毎日。
一色部長とは丸友の仕事の話しかしない。
互いにいたわりの言葉もなく、時折デスクに1000円くらいの栄養ドリンクが置かれてあるのが唯一の気遣い。


そんな日々が約1ヶ月経った頃、あの夜がやってきた。