久しぶりの実家に入ると、居間で父が待っていた。

父はけして頑固親父ではない。
どっちかというと、母と同じくらい呑気者で穏やかな人だ。

でも、この対面の瞬間は緊張した。

ソファに座る父の表情が厳しかったから。


「一色褝と申します」


部長は丁寧に言い、床に膝をついた。
そして、なんと型通りに土下座したのだ。


「佐波さんと結婚させていただきたく、お許しを頂戴しに参りました」


私は仰天していたけど、すぐに部長の横に自分も膝をついた。


「結婚前に佐波さんを妊娠させてしまったことは、誠に申し訳なく思っております。
ですが、佐波さんを愛する気持ちに偽りはありません。どうかお許しくださいますようお願いします」


まー、相変わらずスラスラ出てきますね、部長。
私は呆れではなく感嘆を持って見守る。


すると、ソファから父が立ち上がった。