紗弥と別れてから駆け足で神社に向かった。いつもと違う道で裏路地に入って、人のいない細いそこを道なりに真っ直ぐに進んでいく。

石段は、1段飛ばしで駆けのぼる。見上げた真っ赤な鳥居の向こうには、見慣れたお社が待っていた。


「常葉! 聞いてよー!」


参道の真ん中は、神様の通り道だから通っちゃいけないって聞いた。でもそんなのは無視して、ど真ん中を声を上げながら走っていく。

だけど神社に常葉の姿は見えなかった。大体いつもお社に腰掛けてのんびりしているのに、見当たらないし、呼んでも出てきてはくれない。


「あれ? 出かけてるのかなあ」


境内はしんと静かだった。カツンと、わたしのローファーが参道を蹴る音が響くだけ。

とりあえず座って待っていることにした。常葉がふらっと消えることは多いからきっと少しもすれば帰ってくるだろう。

そう思って、お社に近づいたところ、丁度お賽銭箱で見えなかったところに、常葉が寝ていたのに気づいた。

あ、いるじゃん。と思ったのと同時に。


「ひやあああああ!!」


叫んで驚いて後ずさって、自分の足につまずいて尻もちをついて転げた。

わたしが悶えて呻いている間に、常葉が「やかましいな……」と呟いて目を覚ました。