引っ越し先と学力に合わせて適当に高校を選んだわたしと違い、大和はいくつかの候補の中から絞りに絞って今の高校に決めた。

私立の野球の強豪校だ。大和を一番にスカウトに来たところ。

大和は、小さな頃から、野球がとんでもなくうまいガキだった。


周りの大人はみんな、大和は将来プロの野球選手になるんだと期待した。

大和は、そんなこと大人に言われるまでもなく、自分の意思で、プロ野球選手を目指していた。


甲子園には去年出場している。２回戦で敗退したけれど、神崎大和の名前は随分知れ渡ったと思う。

１年のくせにとんでもない球を投げるピッチャー。

その試合で仲間の珍しいミスさえ続かなければ、こんなところで終わる選手じゃなかったと、いろんな雑誌やテレビで見かけた。


わたしはいつも、ぼうっとそれを見ていた。

こいつがわたしの幼なじみだと知った人からうらやましがられて、それに適当な返事をして、どうにか逃げて。

どんなに有名になっても大和は大和だし、あいつはただ夢のために頑張っているだけだってことも知っていたから、別段特別な感じには思わなかった。

ただ、大和が、どんどん「すごい人」とみんなに言われるようになるたびに、気づかされた。

前へ進む大和と違って、わたしはいつまでも、同じ場所にいるってことを。