「きみたち、来てくれないかとずっと待ってたんだ!」


はいコレ、とおじさんから手渡されたのは、手に持ちやすい縦長の紙パックに入った、甘い香りのする丸いお菓子だ。並んでいた他のお客さんたちもみんなこれを持っている。そのまま手に持って食べ歩きながら、商店街を進んで行く。


「うまく商品にできたから出してみたんだよ。そしたらきみたちの言うとおり、学生さんたちに気に入ってもらえたみたいで」

「すごいですよね、びっくりしました。短期間で大繁盛じゃないですか」

「本当だよ! きみたちのおかげだ、ありがとう!」


半分泣きそうな顔のおじさんに、ちょっと困って紗弥を見てみたら、紗弥は面白そうに満面で笑っていた。


「いいんだよおじさん。だってあたしたち、おじさんの願いを叶えるために来たんだから」

「願い?」

「ちょ、紗弥!」


おじさんが訝しげに眉を寄せる。

が、それに構わず紗弥は、わたしの肩をぽんぽんと叩きおじさんに言った。


「この子、神様の助手なので。願いを叶えることが仕事なんだよね」

「神様の、助手?」


探るような表情のままでおじさんがわたしを見た。ですよね、と、心の中でだけ呟く。


「だからね、おじさんの、お店を繁盛させたいっていう願いを叶えたんだよ。よかったね、叶って」


よく通る紗弥の声が綺麗に響く。わたしは顔を引きつらせたままで何も言えない。

視線が痛かった。でも不思議かなこの視線は、紗弥にはまったく突き刺さっていないらしい。紗弥はいつも通りの明るい顔で爽やかに笑っていた。

よし、もうこれは、なるべく早く立ち去るのが吉だな。

と、思ったときだ。突然おじさんが「やっぱり!」と叫んだ。

……やっぱり?