「こんな子どもの口車に乗せられて、無駄なことしてどうするんだ」
「ううん、無駄じゃないと思う。考えてみたら、案外いけるかも。やれないことはない気がする」
「でも子どもの言うことだろ。そううまく行くかな」
「あのね、今がこれだけ崖っぷちなんだから、やって失敗しようがやらずに終わろうが変わらないでしょ。だったらやれるだけやらなくちゃ。あなたはどうなの。この子に訊かれたでしょう、このままお店を潰したいの?」
「う……そんなわけ」
「ないなら、この子たちが機会をくれたと思えばいいじゃない。わたしはやるわよ、あなたはどうなの?」
「や、やります!」
「いい、これがラストチャンスだからね!」
「は、はい!」
おじさんが再び泣きそうになるのに、紗弥とふたり苦笑いしながら「じゃあ後は」と奥さんと向き合う。
メニューに関しては奥さんとおじさんでなんとかするだろう、わたしたちが手伝えるのはここまでだ。ただ、お店のためにできることなら、わたしたちにもまだ大切な仕事が残っている。
「わたしたちも必殺技を使うので、そちらも新メニュー、お願いします」
「あら、必殺技って何?」
「お店の繁盛に一番手っ取り早くて有効な手段です」
わたしは紗弥と、顔を見合わせて頷く。
「女子高生の口コミって、すごいんですよ」