「何言ってるんだ、きみね、さっきから勝手なことばかり言って。経営のことはね、きみたちみたいな学生には関係ないし、わからないことだよ」

「わたしたちにすらわかるくらいまずいから売れないんですよ」

「あ、あのね……食べにきたわけじゃないなら帰ってくれないかな。営業妨害だよ」

「営業妨害って言ったってお客さん他に来ないじゃないですか」

「それは、でも、時々……」

「おじさん、このままだったらお店が潰れちゃうんですよ!」


これにはさすがに言葉を詰まらせたようだ。おそらく、女子高生に勝手言われて腹が立つ気持ち以上に図星を突かれて戸惑っているに違いない。

神頼みするくらいなんだ、今の状況を誰より理解してピンチに思っているのはおじさん自身なのだから。


「ねえ、おじさんは、おじさんのたこ焼きを売りたいんですか。今のままお店が潰れるまで頑固にまずいものを売り続けるのが願いなんですか。おじさんは、このお店が繁盛して続いていくことを一番に願っているんじゃないんですか!」


おじさんの必死な声を、わたしは聞いた。おじさんがそれを届けたかったのはわたしなんかじゃなく神様だったのかもしれないけれど、でもわたしは確かに、あの切実な願いを聞いたのだ。

そしてそれを、叶える手伝いをするために来た。


「ねえあなた。潮時よ。彼女たちはいいきっかけを作ってくれたんじゃないかしら」


口を開いたのは奥さんのほうだった。わたしを睨んでいたおじさんの目はゆっくりと奥さんのほうを向き、それから奥さんが微笑むのに合わせておじさんはくちびるを引き結んだ。