そして先ほど出たばかりの案が、いくつか形になってテーブルに並んだ。
それぞれのお皿に数種類の丸い食べ物が乗っている。見た目でなんとなく中身がわかるものもあれば、一体何が入っていてどんな味なのかまったく想像できないものもある。
すべてが家庭用のたこ焼き器を使い実際に作ったものだ。素人とは言えさすが料理自慢の調理部員たちの作品、どれもこれも、放課後の空きっ腹を集中攻撃してくるなんともおいしそうな品ばかりである。
部員たちは、またも和気あいあいとは言い難い武士の顔つきでひとつひとつ実食していく。
「あ、これおいしい。焼き方工夫したらたぶんもっと良くなるよ」
「こっちはイマイチかなあ。混ぜる具失敗したかも」
「あーこれイケるわ。他の中身でも食べてみたい」
「だったらたとえば……」
食べながらまた新しい案が出てくる。わたしはおいしいしか言えないのに調理部員は次から次へとアイディアを出し、より良い形へと変えていく。
おやつとして徹底したもの、食事としての要素も盛り込んだもの、シンプルなもの凝ったもの。色とりどりの自由な発想がおいしい匂いの上を飛び交う。
そして最終的にいくつかの案が残り、紗弥はそれをホワイトボードではなくメモ帳に書き出した。そのメモを、これまでタダ飯食い要員だったわたしに手渡し、スタイリッシュに三角巾を脱ぎ捨て言うのだった。
「さてあとは、千世の仕事だよ」