5分以上待ってようやく渡されたパックを手に、商店街のそばにある公園に向かい早速食べてみることにした。
蓋を開けるとほかほかの湯気が一気に立ち上り、踊るかつお節も出来たて感を増幅させている。若干かつお節が多すぎる気がするけれど、まあ見た目はまずまず……いや、なんかちょっと焦げて……うん、まあ許容範囲かな。匂いは十分、食欲をそそるいい感じのが漂っている。


「なんだ、意外とおいしそうだ」


どんなものだろうと覚悟していた分ちょっと拍子抜けだ。よほどえげつないものだったならともかく、これならおじさんの負のオーラさえどうにかすれば売れそうな気がするけれど。

つまようじを刺し、熱々のたこ焼きをふうふうひいひい程よく冷まして、ぱくりと口に放り込んだ。


なるほどまずかった。

そもそもの材料がダメなのか。焼き方がダメなのか。両方ダメなのか。たこ焼きでここまでまずくできる理由がわからないほどまずかった。

焼き過ぎてパッサパサしている部分もあれば逆に生地がべちょべちょしていたり。中身のタコも大きさがまちまちだし、そもそもよく見ればたこ焼き本体も素人並みに形がいびつだ。おそらくこれを隠すための大量のかつお節とみた。

つまりだ、あのお店にお客さんが来ない理由はおじさんの負のオーラのせいではなく、それよりも単純で明白だったのだ。商品がおいしくない。


「これは、なかなかひどいなあ」


もったいない精神でどうにか全部食べきったわたしを誰か褒めてほしい。過酷だったけれど食べ物は粗末にできない。

食べ物は悪くないのだ。悪いのはおじさんだ。

そしてそんなおじさんには悪いけれど、わたしにできることはなさそうなので早々にこの件はリタイアしよう。そうしよう。


「千世」

「うおおう!!」


心臓飛び出るかと思った!


「な、何あんた! いつからいたの」

「今だ。びっくりしたか?」

「したわ! それやめろって言ってんじゃん!」


いつの間にかベンチの隣に座っていた常葉がにいっと笑ってわたしを見ていた。なんだかこれデジャヴ。