次のお仕事が入ったのは、それから数日後のことだ。


想像通りヒマなこの神社では、参拝客は本当に少なくて、わたしは性悪神様の命令により一応毎日通ってはいるけれど、神様のお仕事を手伝うことより、境内のお掃除などをすることの方がもっぱらの日課だった。


そしてその日もいつもどおり、ひとり落ち葉をほうきで掃いていたわたし。

常葉はさっきからどこかに行っている。どこにいるのか知らないけれど、時々ふいにいなくなるときがあるのだ。


前日の雨で、随分落ちた葉っぱを集めていると、鳥居を誰かがくぐってくるのに気づいた。

見たことのない中年のおじさんだ。おじさんは、わたしのことなんて眼中に入っていない様子で、お社の前まで進んでいく。

あ、人が来た! と喜んだのは、本当にたった一瞬の話。

おじさんを眺めながら、だんだんと顔が引きつっていってしまったのは、おじさんの形相があまりにも必死だったからである。

そんなにガチな感じで、何を神頼みに……。

無駄に力強いおじさんの柏手の音が、ほうきを握りしめて突っ立っているわたしのところまで小気味良く響く。


「ほう、久し振りの参拝者じゃないか」


声がして驚いた。いつの間にいたのか常葉が隣に立っていた。

常葉は「さて、あの男は何を願うか」と囁きながら、ユイちゃんのときみたいに、ぎゅっとわたしの手を握る。

そうして聞こえた声。


『うちの店が、繁盛しますように。神様、どうか、どうかお願いします』