「あーもう疲れた! お腹減った!!」


すっかり日が暮れた夜の入り口。

常ノ葉神社にたどり着いた途端、わたしの体力は限界をむかえてお社にどさっと倒れ込んだ。

随分遅くなったけど、ぼんやり灯る明かりの下で、常葉はわたしを待っていた。


「ご苦労だった、千世」

「ご苦労どころじゃないよもう……しんどかったあ……」


寝ころんだ隣で、座った常葉が見下ろしている。

わたしのおでこの前髪を、そっとかき分けた指先が、ひんやり冷たくて心地よかった。


「頑張った千世にご褒美があるぞ、喜べ」

「喜べって言ったって、どうせしょうもないものでしょー」

「三波屋の饅頭だ」

「うそ!?」


ガバッと起きあがると、常葉の手には確かに三波屋のおまんじゅうがふたつ。


「どうしたのそれ?」

「安乃が供えていったものだ。ひとつは俺のだが、ひとつは千世にやろう」

「やったー!」

「元気出るか?」

「出る!」


おまんじゅうを受け取って、ふたりでむしゃむしゃとそれを食べた。

いつも以上においしい気がしたのは、たぶん、ものすごくお腹が空いていたせいだ。