ぎゅっと、クロちゃんを抱きかかえたユイちゃんの姿に、嬉しいよりも何よりも、まずはとにかくほっとした。
肩の荷がおりた感じ。ひと仕事終えて、一安心。体中の空気がぷしゅうと抜けていくような、そんな気持ちだ。
悔しいけど常葉の言うとおりだった。途中でくじけにくじけたし、本当に見つけられるとは思わなかったけど、なんだかんだで、わたしにもできた。
とりあえずよかったと、今はそれだけを思う。
「おねえちゃん」
ユイちゃんに呼ばれて振り向いた。「なに?」と答えると、ユイちゃんはなんだか不思議な表情を浮かべて、少し探るような口ぶりでこう訊いた。
「おねえちゃん、もしかして神様?」
え、と声を詰まらせると、ユイちゃんは恥ずかしそうにもごもごしながら言葉を続ける。
「ユイね、神様にお願いしたんだ。クロが見つかりますようにって。そしたらおねえちゃんが見つけてくれた。ねえ、おねえちゃんは神様でしょ」
しゃべりながら、確信を持ったのか、ユイちゃんはキラキラした瞳でわたしを見上げた。ああ、いつかわたしが失ってしまった、純粋すぎる綺麗な瞳。
「ま、まあ……神様、ではないんだけれど、神様の、手伝いをしているというか」
「やっぱり! そうだったんだ! おねえちゃんはあそこの神社の、神様のお手伝いさんなんだね!」
すごい! とユイちゃんは盛り上がる。また神様にお礼に行かなきゃと、さっそくお母さんと行く日の予定を決めているくらいだ。
まいったなあと苦笑いしながら、うそではないからまあいっかと思った。
人が来てくれれば常葉も喜ぶだろうし、神様を信じるのは悪いことじゃない(呪われたりしないから)。