すっかり夕暮れの空だった。

建物も木も、人も道も、オレンジ色に染められている。


ある家の前で足を止め、門の外から覗いてみると、玄関の前で女の子がじっと座っていた。

女の子は、エサのようなものが入った小さなお皿の前で、少し悲しそうな顔をしながらそれを見つめている。


「ユイ、いつまでそこにいるの」


ちょうどそのとき、家の中からお母さんらしき人が出てきた。

女の子がその声で顔を上げるのと同時に、お母さんが、わたしに気づいた。


「あら……何か、ご用ですか?」

「あ、あの、えっとですね」


ぼうっと突っ立っていたわたしに、お母さんは不審そうに首を傾げる。

女の子もわたしを見ていた。わたしはぎこちなく笑みを浮かべて、「えっと」と言葉を続けた。


「ここのおうちがクロちゃんを探してるって、聞きまして」

「クロ、見つけてくれたの!?」


女の子が立ち上がってガシャンと門を掴む。


「クロ、どこ!?」

「あの……ここにはいなくて。見つけたんだけど、でも、わたしじゃちょっと連れてこられなくて。場所は、知ってるんですけど」


引っかき傷のある手の甲を隠しながら言うと、女の子は「お母さん、いこう!」と門を開けた。


「ユイをそこにつれてって! ユイが迎えに行く!」

「う、うん。そのつもりで来たから、もちろんだけど」


ちらっとお母さんを見た。

お母さんは少し困ったような顔をしながら、ユイちゃんをちらりと見て、それから「お願いします」とわたしに答えた。