もしかして、と思った。
もしかしてあの向こうに、猫ちゃんたちのたまり場的なものがあるんじゃないかと。
「……今のうち、だよね」
まだほとんどの猫はニボシに群がっている。わたしがジャングルジムから降りても誰も気づきもしない。
よし、と気合いを入れて、帰って行った猫に続き植木の向こうに入って行った。
植木を抜けるとフェンスがあった。そのフェンスの、壊れて穴の開いた隙間をくぐると、古い空家の敷地に繋がっていた。
長いこと使われていないらしい、かなり年期の入ったボロ屋だ。
見ると数匹の猫が、庭や縁側でくつろいでいる。
まるで今にも何かが出てきそうな怖い雰囲気の場所だけど、猫たちにとっては、ここはとっておきの秘密基地のようだ。
「クロちゃん……いますか……?」
おそるおそる庭を歩き探してみた。伸びている猫や丸まっている猫。わたしを小うるさそうに睨んでいる猫。1匹ずつ、確認していく。
でも、クロちゃんはここでも見つからなかった。
「やっぱりダメかあ……」
そうそう上手く運ぶものでもないらしい。わかってはいたけれど、やっぱりかなりがっくりきた。
もう帰ろう、とため息を吐き、わたしは入ってきたところへ戻ってフェンスの穴の前にしゃがんだ。
だけど、そのときふいに、何かが聞こえた気がして。
本当に何を考えるでもなく、頭を下げたまま、振り返った。
「あ」