「…………」
眼下には、猫くんたちのサークル。
わたしが放り投げた袋からあふれたニボシを、数十匹の猫たちがみんなでひたすらに食い漁っている。
尋常じゃないほどの数の猫だ。
ぶっちゃけこの世の終わりかと思うくらい恐ろしい光景だけれど、ニャゴニャゴ言っている彼らは、幸いなことにわたしには見向きもしていなかった。
「なんだあのニボシ……マタタビのエキスでも入ってたのかな」
よくわからないけれど、普通のニボシではなかったことは間違いない。なんなのかちょっと気になるけれど、今は、それどころじゃない。
怖い思いまでしてあのニボシをばらまいたのは正解だった。
これだけ猫が集まったなら、この中にクロも、いるかもしれない。
いや、間違いなく、クロはここにいる。
「……ほんっと役に立たないな、神の七つ道具」
いなかった。こんなにも猫がいるっていうのに、目的のクロはいなかった。
もうやだ。本当にやだ。
神様のぽんこつ七つ道具まで使い果たしてしまったわたしには、もう何もできることはない。
家に帰りたい。むしろここから動きたくない。
もうここに住もう。そうしよう。ジャングルジムの妖精になって、この猫たちを末永く見守っていこう。
そう決意しかけたときだ。
ふと、正気に戻った数匹の猫が、のっそりとどこかへ行くのに気づいた。
そこは最初のブチ猫がやってきた場所。そしてその前に見た黒猫が去っていった場所。
シーソーの奥の、植木の向こう側。