「すご! 猫ってこんなにニボシ好きなの? それとも相当腹ペコだったのかな」


ボリボリとかじっている様子をじっと見ていると、さらにニャーと別の鳴き声が聞こえてくる。

見ると、ブチ猫がやって来たのと同じ方から、数匹の別の猫もやって来ていた。

ニャアアとちょっと低い鳴き声の彼らは、わたしを警戒するでもなく、むしろ舐めくさったような目つきで近づいてくる。


「え、ちょ、きみらもニボシ食べに来たわけ?」


2、3歩後ずさりながらニボシを撒くと、猫たちは狂ったようにそれを貪った。

その食べっぷりときたらちょっと怖くなるくらいだ。いや……ぶっちゃけちょっとどころじゃない。

狂気に満ちた食べ方も、野良猫に囲まれている現状も、正直、かなり怖い。


「マンチカンの子猫に囲まれるならどんとこいなんだけどな……」


なんなんだろ。今、猫たちの間でニボシブームでも来てるのかな?

うん、たぶんそうだ。

だって、目を疑いたくなるほどに。どうしてか、どんどん、さらに、たくさん、猫が集まってきているし。


「……うそでしょ」


10匹? いや、もっといっぱいだ。

静かだった公園の近くのどこにいたのか猫ちゃんたちが、次々とわたしめがけて進撃してくる。

彼らの目はまさに獲物を刈る肉食獣のそれだ。百獣の王と同じだ。当然獲物はわたし。そんなばかな。


「ひ、ひぃいい!!」


なんだこれ、何が起きてる?

なんでわたし、猫に襲われてる?


「ブニャアアア!」


ひときわでかい猫が、猫とは思えない声を上げるのと同時に。

わたしはニボシの袋を投げ捨てて、ジャングルジムへ駆け上った。