「…………」


ぽつん、と公園にふたたびひとり。なんだか無性に大声を上げたくなる。

心から泣きたいけれど、泣いている場合じゃない。

泣いたってどうにもならないんだもの。誰も助けてくれない。自分でやるしかない。


「……もう、絶対あいつにおまんじゅう買ってやらない」


決意して、とりあえず、ニボシの袋を開けてみた。

中身はどう見たって普通のニボシだ。おいしそうな匂いがほわっと香って、なんだかご飯が欲しくなる。


「これをエサにして捕まえろってことかなあ」


確かにニボシは猫ちゃんのおやつなイメージがある。

ただし、ニボシでおびき寄せられるわけじゃない。これはあくまで見つけてから使うための道具だ。

つまり結局はまず、クロちゃんを探し出さなければ意味はないわけで。


「はあ……なんの役にも立たないじゃん、神様の七つ道具」


ため息混じりに、独り言をぼそっと漏らしていたときだ。

ニャーと声がして振り向くと、なんの奇跡か猫が1匹、植木の向こうから現れた。

ただ、残念ながら、クロちゃんとは違う茶色と白のブチ猫だ。


「なんだ……来てくれて悪いけど、わたしが探してるのはきみじゃないのよ」


でも心細かったひとりの場所へ来てくれたのはうれしいので、お礼にニボシを3匹地面に撒いてあげた。

するとブチ猫はものすごい勢いで飛びついて、あっという間にたいらげてしまった。