心臓が止まるかと思った。
振り向くと、いつの間にいたのか隣のブランコに、常葉が立っていた。
「さぼっていたらさぼり虫に尻をかじられるぞ」
綺麗なお顔の神様は、綺麗なお着物を風に揺らして、颯爽とブランコを漕いでいる。
「あんた、いつからいたの?」
「今来た。びっくりしたか?」
「したわ! 気配なく近づくのやめてよね!」
「はは。千世の驚いた顔はおかしかった。変顔。へんがお」
常葉はそう言いながら、なんとも楽しそうにブランコを加速させた。
そのまま飛んでいけばいいのに。とわたしは思いつつ、年甲斐もない怪しい神様とは逆に、小さく謙虚に揺れるだけ。
「てか、別にさぼってないし。わたしこれでも朝からずっと探してたんだからね」
「知っている」
「知ってるならさぼってるとか言うな。頑張ったね、もういいよ、あとはボクに任せたまえ、アハハハハ! って優しく言ってよ」
「やだ。あはははは」
「こんのやろう……て言うかさ、やだって言われたってわたしもう、これ以上はほんと無理だって」
できることなんて限られてるし、できることは十分やった。
ここまでだけでも、褒められてもいいくらいのことはしてきたと思うんだけど。