「……今のが、あの子が探してた猫?」
「そうだ。覚えたか?」
「まあ……特徴のある猫だったから」
「よし」
常葉が笑った。
途端に嫌な予感がして、わたしは今すぐここから飛び降りたくなった。
「明日は土曜だ。学び舎は休みだな」
「学生の本分は勉強であり、学ぶことに休日は1日たりともございません」
「明日の休みを利用し猫を探してこい。あの子どもの願いは千世が叶えるのだ」
「無茶言うな! 知らない猫をどうやって探せって言うの!?」
「安心しろ、猫は今もこの町で生きている」
「そんな心配はしてない!」
「心強いな。気がかりははじめからないと言うことか」
「全然話かみ合わない!」
西の空に日が沈む。つるっとしたてっぺんが、低い町並みの向こうに消える。
むなしい叫びは無視されて、うなだれてる間に掴まれる。
明日、何時に目覚ましかけよう。
そんなことを考えて、為すすべもなく担がれながら、焼けた景色でわたしはまた、見苦しく空を飛んだ。