ふたりでチョコチップクッキーをかじりながら、窓の外を眺めていた。
校庭はすっかり海みたいだ。最近はよく雨が降るからしょっちゅうこんな感じ。朝、外で練習する運動部の子が「また校舎で筋トレだ!」って嘆いているのを聞いた。
外は暗くて、そのせいで雨が打ち付ける窓にはこっち側の景色がよく映る。
「で、何があった?」
窓に映る紗弥と目があった。逃れられない目だ。
わたしはむぐむぐとクッキーを頬張りながら、そっと自分のおでこに手を伸ばしてみる。
そこにはもう何もない。でも、昨日から……昨日のあの瞬間から、じわっと温かい妙な感覚が、ずっとそこに残ってる。
今は消えた、謎の光を思い出す。
「昨日……」
「うんうん」
「……神様に、祟られた」
ザアッと雨足が強まった。
びしびし嫌がらせみたいに窓に雨粒が打ち付ける中、ぽかんと口を開けた紗弥が、顔をこちらに向けていた。
わたしも振り向くと、紗弥は食べかけのクッキー片手に険しく眉を寄せている。
「千世……ほんとにどうした。結構軽い気持ちだったけどマジで心配になってきた……」
「それはわたしが祟られたことについて? それとも祟られたとか言ってることについて?」
「もちろん後者だよ。千世、オカルト興味なかったはずでしょ?」
そりゃあ、そうなんだけど。