「…………」


ゆっくりと両手が離れて、わたしは目を開いた。

息をのむほど綺麗な笑顔が、目の前で、わたしのことを見ていた。


屋根からの水滴がひとつ落ちる。

それさえ響く、静かな中。


なにをされたかなんて、その瞬間は、思い当たらなくて。

ほんの一瞬だけれど、わたしの意識の中では長い長い間。考えて、思い至って、そして。

ボッと顔が焼け焦げた。


「い、い、い、いま……わたし、に……!」

「ん?」


……わたし今、なにをされた?

この人わたしになにをした?


わたし、今、いま……この人に、おでこに、キ……


「ああ。今、お前を祟った」

「キ、ス……って、へ?」


え? タタッタ……?

キスでなく? タタッタ?


……祟った?


「どんな祟りかはお楽しみだが」

「……え、ちょっと待って。え?」

「この祟りを解いてほしくば、明日から毎日、俺の仕事の手伝いをしに来い」

「はああ!?」


ちょっと待てちょっと待てちょっと待て。

どういうこと!?