何を思ってるのか、なんて、わかるわけがないけれど。
うれしそうにも、それでいて悲しそうにも見える横顔は、神様だって言うくせに、あまりにも、わたしたちとおんなじだった。
きっと、自分の今浮かべている顔が、どんな顔なのか、気づいていないところも。
「だが、千世」
ふいにその人が言う。
振り向くと、少しだけ表情の雰囲気が変わっていた。
綺麗にゆがんだ口元は、逆に恐ろしさを感じるくらいの美しすぎる微笑みだ。そのうえ、悪戯気にも見えて。
「俺は今、とても心を痛めている」
「へ?」
「俺の言葉を疑われたこと。そしてそれ以上に、未来ある若き命が夢も持たずにのんべんだらりと日々生きていることを」
「なっ……!」
のんべん、だらりて。
こっちだっていろいろそれなりに悩みながら生きてるって言うのに。そういう、言い方って。
「だから千世」
言い返そうと、したところだ。
わたしが口を開くのより早く、その人の両手がわたしのほっぺたを包んだ。
息が止まった。
ゆらりと琥珀の瞳が細まるのを見た。
それが近づいて、とっさにぎゅっと目をつぶった暗闇の中で。
おでこに、柔らかなものを、感じた。